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清教徒
第一幕その八
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きなかった。
「私はどうすればよいのでしょう」
「それは・・・・・・」
 リッカルドは計算違いをしていた。彼はあくまでアルトゥーロへの個人的な感情だけで動いているに過ぎなかったのだ。エルヴィーラの心までは知らなかった。それを知るにはあまりにも周りが見えなくなってしまっていたのであった。それが彼の過ちであった。
「諦めるしかないでしょうな」
 そう言うしかなかった。そしてそれが決定打となってしまった。
「そんなこと・・・・・・私にはできない」
 一言そう言った。そして様子が急変した。
「私はあの方の妻なのですから。そう、そうでなければエルヴィーラではない」
「えっ!?」
 皆それを聞いて驚きの声をあげた。
「エルヴィーラ様、今何と!?」
「私はエルヴィーラではありません」
 彼女は一言そう言った。
「御気を確かに」
「私はあの方がおられない限りエルヴィーラではありません。いえ」
 そして虚空を見た。それを見て笑った。
「あの方が来られました。これで私はようやくエルヴィーラとなったのです」
「馬鹿な、何ということだ」
 ヴァルトンはそれを見て絶望の声をあげた。
「この様なことになるとは」
「何と・・・・・・」
 ジョルジョは呆然としていた。何と言っていいかわからなかった。それは他の者も同じであった。
「如何致しましょう」
 オロオロとしてヴァルトンやジョルジョに対して尋ねる。だが二人は答えられない。それが余計事態の悪化に拍車をかけることとなったのである。
「ジョルジョ」
 だがヴァルトンはその中でジョルジョに顔を向けてきた。
「はい」
「娘を部屋に案内してくれ。そしてそっとしてやるのだ。いいな」
「わかりました」
 彼は頷いた。そしてエルヴィーラに声をかけた。
「アルトゥーロ殿と出会えて楽しいか」
「はい」
 彼女は笑顔で答えた。だがその視点はもう定まってはいなかった。明らかに狂気の目であった。
「そうか」
 彼はそれを聞いて頷くだけであった。それ以上はとても言うことはできなかった。
「それでは部屋に行こう。彼が部屋で待っているからな」
「叔父様、何を仰っているのですか」
 エルヴィーラはそんな彼に対して言った。
「あの方はここにおられますわ」
「そうか、そうだったな」
 あえて言わなかった。ここは彼女に従うことにしたのだ。だがそれでも言った。
「婚礼の儀の為だ。ここは部屋に戻れ」
「叔父様も来られますね」
「勿論だ」
 笑みを作ってそれに応える。
「だから今は部屋に戻れ。そのヴェールが汚れないように」
「あの方の贈って下さったヴェールが」
「そうだ。では行こうか」
「はい」
 こうしてエルヴィーラはジョルジョに連れられて自分の部屋に戻った。後にはヴァルトンとリッ
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