第1弾 『私は欠陥品さ』
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“何か”が在り、そしてそれはSランク武偵……『双剣双銃
カドラ
のアリア』と呼ばれるお前ですら一人では困難な事。だから求める、自分のレベルについて来られるだけのパートナー、キンジをな」
――ただの推論だが、間違ってはいなかったらしいな。そう、アリアの驚き、一緒に何かを思い出したのか強張った様な入り交じった表情を見て、最後にジャンヌが言った。
ただの同居人……それにしては、鋭過ぎる推理力だ。
「……そうよ、アタシにはどうしても急がなきゃいけない理由が在る。だから、アンタの言う通りどうしてもパートナーが必要なのよ――今度はアタシから質問。アンタ、本当に何者なの?」
「…………」
「アタシの事は知ってるみたいだけど、さっきの言い方だと目的までは知らなかったのよね? それなのに、出会って数時間も無いのにこれだけの推理を組み立てた……ただの同居人とは、言わせないわよ」
言い逃れ、誤魔化しは許さない。そんな睨み付ける様な視線で、ジャンヌを見るアリア。アリアとて推理は苦手だが、それイコール考える事が苦手には繋がらない。一回は一回、つまり自分は質問に答えたのだからお前も質問に答えろ、と言う事だろう。
アリアの視線を受け止めるジャンヌも、それが分かっているのか少し……何かを思い出す様な、そんな表情を一瞬浮かべ、言った。
「そうだな……言ってしまえば、私は“欠陥品”さ」
「え?」
「世界は、本当に不思議だな。必要の無い物ばかり、自分の手に入ってくる。それなのに――本当に欲しい物は、なかなか手に入らない」
――どうしてだろうな。そう、何処か寂しげな表情で語るジャンヌ。彼はここに至るまでに、必要の無い物ばかり持ってしまった。別に、ここにいる事を後悔している訳ではない。
……彼は求める、だから旅をする――出来損ないにして『旅の魔法使い』たるジャンヌは。
「……話が逸れたな。私はキンジの味方だ、何が在ろうともな。だからアリア、お前がキンジと敵対しない限りは、私はお前の味方で居てやれる」
「――そう。なら十分よ」
それで、納得できたのかアリアは大人しく引き下がり、風呂場が何処か訊いて去って行った。
キンジと敵対しない限り……それはつまり、キンジにとって“害”となる存在になるならば、ジャンヌはアリアの敵となると言う、一種の警告も伴っていた。
(何が在ろうとも、何が起ころうとも……私は、キンジの味方で在り続けると約束した)
何かを誓い、語り掛けるように虚空を見つめ、声には出さずジャンヌは呟く。交わした約束は、まだ交わってはいない。
(私はお前との約束を守る……だから、お前も私との約束を守れ――金一
きんいち
。同じ“兄”としても……な)
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