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ソードアートオンライン―死神の改心記―
プロローグ
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はよくある、ありふれた感情だと思っていた。だが、実際はもっと複雑な感情だとこの頃実感している。
もう死んでもいい、そうは思っているのに−

左腰に納められた愛刀“孤狼”の柄に手をかける。ざらざらとした質感が手に伝わる。
腰をかがめ、脚に力をためる。
敏捷寄りのビルドのおかげで俺は自分が一陣の紅い風になったように感じた。
黒ローブがぐんぐん近まる。
十分に近づいたところで、抜刀。同時に“孤狼”の刃を紅いライトエフェクトが覆う。
カタナスキル、単発居合技“鮮血の月”。
とある特殊な一工夫によって俺の代名詞となっている“ソードスキル”である。
“ソードスキル”。それは現実ではただの一般人Aの俺たちプレイヤーの攻撃の要。
ある決まったモーションをすることで、通常攻撃の数倍の速度、威力を誇る一撃を放つことのできるシステムだ。
その法則にのっとり、システムアシストによって加速された俺の右腕が閃いた。
同時に黒ローブの死神も単発重振り下ろし技“ジャッジメントライト”を放つ。
青白いライトエフェクトが俺の鼻先に迫る。
だが―
「おあああぁっ!」
狂刃が俺に触れる前に、紅く光る刀が黒ローブの細い体を水平に二分した。
奴のHPが0を示し、真っ黒な体が、まるでガラスが砕けたような爆砕音と共に四散した。
愛刀を鞘に納める。言葉にできない複雑な感情が湧き出てきて、俺は大きくため息をつく。
パリパリの逆立ち髪をゴシゴシと?き、なんとか一言ひねり出す。
「結局生き残ることに執着してんだよなぁ」
ズボンのポケットに手を突っ込み、先の見えない道を歩き出す。

デスゲーム開始から一年、死者約三千人、最前線五十一層。
俺―ザインはいまだ生き残っていた。
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