7部分:第一幕その七
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程飲みやすい。そして美味い。
「それをね」
「また奮発しますね」
「そうかしら」
アデーレの言葉にとぼけてみせる。
「とにかくお通しして」
「わかりました・・・・・・あら」
その客はもう来ていた。やはり彼であった。
「ロザリンデ、来たよ」
アルフレートは能天気なまでの様子で彼女の前に姿を現わした。
「じゃあこれからは二人で」
何時の間にかアデーレはいない。要領を得ていた。
「束の間の一時を楽しもうよ」
「一時だけなの?」
奥方はアルフレートを見てこう尋ねてきた。
「本当に」
「何が言いたいんだい?」
「うちの人八日はいないのよ」
「八日でも一時のものさ」
アルフレートは奥方にこう返した。
「何故ならね」
「ええ」
「君と一緒にいられる時間はほんの一時にしか感じられないから。だからさ」
「何を言うのよ」
その言葉に思わず頬を赤らめる。まるで何も知らない少女のように。
「そんなことを言っても」
そうは言っても悪い気はしない。だがこれはあえて言わない。
「何も」
「奥様」
そこにアデーレが戻って来た。実にタイミングがいい。
「ワインをお持ちしました」
「有り難う」
「グラスも」
見れば二つ持って来ている。彼女は何もかもわかっていた。しかも栓まで抜いている用意のよさであった。
「ささ、これを」
「有り難う。トカイだね」
「はい」
アデーレはにこりと笑ってアルフレートに答える。
「その通りです」
「僕はこれが好きでね」
彼はそれを見ただけで機嫌をよくさせていた。
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