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形而下の神々
ナツキ・エンドーと白い女神
物語の始まり
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出る推論は多々あるが……。

 俺にはこの時すでに確信に近い思いがあった。後は確認のみだ。

「トランシルヴァニア山脈付近で、オルト川の流域。更には女神信仰が深く根付き、女神像が存在できる環境が揃った場所……」

 その場所は、地図の上でただ一点を指していた。

「ホレズ修道院……」


 ユネスコ世界遺産にも登録される、ルーマニアの山中の修道院だ。



 約束の時は2日後に迫っていた。
 たかが一週間程だが、探していた人物に会えるとなると少し気持ちが高ぶるものだ。

 早速旅の支度を整える。グランシェに連絡をし、ともにホレズ修道院へ向かう約束をした。
 相手は一体いくつなんだろうか。

 話だけなら齢90を超える。ただし、見た目は二十歳くらいだという。

 いくら何でも見た目が若いなんてモンじゃあ説明が付かないだろう。

 まぁ、そんな不思議も全て 彼女に会えば分かるだろう。

「楽しみだなぁ〜」

 自然と顔がほころぶ。獲物を追い詰めた気分だった。











 ――今から思えば、追い詰められてたのは自分なのにね。

 まぁ、今ではグランシェと一緒に飛ばしてくれた事に感謝だが。
 彼女が俺達に託したものを俺は全う出来たのか、全てを終えた今では分からない。


「夢の様な一生だったよ……」

 俺は死に枕に座る2人の人間にそう言った。
 枕の脇に控えていた人間は俺の死に泣いていた。

 何かを言っているみたいだが、何も聞こえないんだ。そろそろ体も限界なのかもしれない。しかし最後に視界の端に捉えた彼女の唇の動きは、確かに俺に伝わった。

 そうか、分かったよ。それなら俺も安心だ。

「まるで……お伽話の様な……――――」


 ――――幸せな一生だった。


『こうして、津吹太一はその84年の人生を終えます。この物語は天界の神々をこの大地に叩き落とした二人の英雄の物語――』

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