4部分:第一幕その四
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してきた。
「嫌な奴だ。しかも風見鶏みたいに落ち着きがない」
「風見鶏ですと」
「そうだ。もう君の顔は見たくない」
「御言葉ですが伯爵」
ここで遂に言葉を詰まらせてきた。いい加減言葉がなくなったのであろうか。
「それは」
「今ですよ」
それを見てアデーレが奥方に囁いてきた。
「収めるのは」
「そうね。あの」
アデーレの言葉に頷いてから彼等に声をかけてきた。
「ブリントさん、お帰りになられた方が」
「奥様」
「そうだな。戸口も開いている」
伯爵も少し怒りが収まってきた。それでブリントに対して言う。
「帰り給え。いいな」
「ではそうしましょう」
ブリントは憮然としてそれに従ってきた。
「ではこれで」
そして彼は姿を消した。これで一安心だとロザリンデはやれやれといった様子で胸を撫で下ろした。それから夫に顔を向けてきた。
「やっぱり判決を受けたのね」
「うむ」
伯爵は不機嫌な顔で妻に答えた。
「残念ながら」
「けれどたった五日ですよね」
彼女は刑期について問うた。
「それでしたら」
「馬鹿を言ってはいけない」
「えっ!?」
夫の不機嫌そのものの言葉に思わず声をあげる。
「あの、それはどういう」
「八日になった」
彼は言った。
「伸びたのだよ」
「どうして」
「だから怒っているのだ。全てはあの男のせいだ」
ブリントが去った戸口を見て忌々しげに述べた。
「全く。不愉快極まる」
「そうだったのですか」
「そうだ、今日にも行かないとお迎えが来る。そうなれば全ては終わりだ」
「はあ」
これには流石に一瞬言葉を失った。
「伸びたのですか」
「裁判の場で出鱈目言いまくってくれてな。あげくには言わんでもいいことまでとち狂って喚き出して話を滅茶苦茶にしてくれたのだ」
実際にそうした愚か者はいる。世の中は悪い意味でも広い。
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