暁 〜小説投稿サイト〜
DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一〜四章
二章 やんちゃ王子の観光
2-13一大事

[8]前話 [2]次話
「あ!アリーナ様、探しましたぞ!」

 城の兵士だった。

 一瞬逃げようかと思うが、じたばたするのも見苦しい。
 思い直して踏みとどまる。

「すぐにお城にお戻りください!王様が、王様が大変なのです!」
「父上が!?」

 父王が倒れたとなれば、さすがに暢気(のんき)力試(ちからだめ)しの旅などしている場合ではない。
 父の子としても、世継ぎの王子としても、戻らねばならない。

「ブライ、クリフト!帰るぞ!」


 ブライの移動魔法で城へと戻り、アリーナは父王の元へと急ぐ。

「親父!」

 いないだろうと思いつつ駆け付けた玉座には、果たして父王がいた。

「親父……」

 父王が口をぱくぱくと動かす。

 ――父上と呼ばぬか。――

「それどころじゃないだろ。親父が大変だというから、急いで戻ってきたのに。」

 ぱくぱくぱく。
 ――それはそれ、これはこれだ。――

「わかりましたよ父上。」

 側に控えていた大臣が口を挟む。

「王子。なぜ会話が成り立っているのです。」
「なぜって。……そういえば、父上のお声が。」
「そうです。王様は、お声が出なくなってしまわれたのです!」
「それは大変だが。会話ができるなら、当面は問題ないだろう」
「それは王子だけです。」
「それは困ったな」

 通訳のためだけに張り付いているわけにはいかないし、意思の疎通に時間がかかれば執務に差し支える。

「原因はわからぬのか」

 ブライが会話に加わる。

「神官長殿には、原因がわからぬそうで。ブライ殿がお戻りになったら、お知恵をお借りできないかと思っておりましたが。」
「これほどお元気で、お声だけが出ないとなると。わしにも、心当たりは無いのう」
「そうですか……。他に、誰か知恵者(ちえしゃ)は……。」
「裏庭のゴン爺はどうじゃ。もう、聞いたのかの」
「庭師のゴン殿ですか」
「奴は魔法こそ使えぬが、なかなかに見識(けんしき)の広い男じゃ。何か知っておるやも知れぬ」
「よし、ゴン爺だな」

 ぱくぱくぱくぱく。
 ――アリーナ。お前はおとなしくしておれ。――

「はい父上!必ずや、お声を取り戻す方法を探し出して参ります!ブライ、クリフト。行くぞ!」

 ぱくぱくぱく。
 ――アリーナ!これ、待たぬか!――


 ゴン爺から、一時は声を失いながらも、声を取り戻した経歴の持ち主、サランの町の美声の詩人、マローニの話を聞く。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ