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外伝 ドラゴンクエストV 勇者ではないアーベルの冒険
ムッツリさんの最後の戦い 覚醒編
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前で食いかかる姿勢で睨んでいます。

「俺が難解な用語で説明するよりも、体験した方が早い。
前回と同様に、装置を装着してくれ」
青年は、私たちを前回の実験室に案内しました。


私たちは、再び真っ黒な空間の中にいます。
そして、前回と同様に、前方右側に光が見えます。
「進めないね、クリスお姉ちゃん」
「そうね、アリス」
私たちはお互いに顔を見合わせています。
表情は、かなり悪いです。
今回、異世界に進入できないのならば、以前斑鳩さんが話をしていましたフェイズ2に移行できないことになります。
「フェイズ2とは、異世界から技術を習得する内容だよ。
ドラクエ3の世界だったら、困難もなく習得できるはずだよ」
斑鳩さんは昔使用した、凍らせる指輪をさすりながら、説明をしてくれました。

意識が戻らないお姉ちゃんたちの脳波からは、異世界の座標を示す情報が現れなくなっています。
青年の話では、この状態に移行してから約1ヶ月ほどで、脳死と同様の状態に移行して、死んでしまうそうです。

最終的な手段として、斑鳩さんが持っている指輪と同じ技術を活用して、お姉ちゃん達を冷凍睡眠状態で維持する方法もあるようですが、未だに臨床実験が進まないことから、安全性が保証できないとのことです。

「アリス。
一度、戻って報告するよ」
「うん」
私は、後ろ髪をひかれる思いで、真っ暗な空間に戻りました。
そこには、大理石で作られた台座のようなものがあり、台座のうえに赤いボタンがあります。
「これで、帰るわよ」
「うん」
私たちは、一緒にボタンを押しました。
私の意識は薄れてゆきます。
「・・・」


「気づきましたか」
「・・・」
「今回は、装置が起動してから3分程しか経過していません」
青年はやさしい口調で私に声をかけました。
「・・・」
「途中で、壁のようなもので行くことを阻まれましたか」
私は頷きます。
「やはり、あちらの世界から私たちが進入することを遮断しているようです」
青年は、別の被験者による試験でも、2回目以降の進入が止められたことがあると説明した。
「おそらくは、移動先の世界が、なんらかのプロテクトを作動させたのだろうね。
少なくとも、俺があちらの世界での管理者の立場なら同じ事をするね」
「そんな・・・」
「今回の研究は、これで終了ですね」
青年は、寂しい表情を見せます。


「ちょっと、まってくれ」
斑鳩さんのほうから、斑鳩さんではない声が聞こえました。
「あ、くまが・・・」
「しゃ、しゃべった!」
斑鳩さんは、思わず熊のぬいぐるみを地面に落としてしまいました。

「どういうことだ・・・」
周囲のひとが驚愕しています。

そのなかで、斑鳩さんだけは冷静でした。

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