23部分:第三幕その六
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「復讐!?」
「だから言ったじゃないか」
博士はにこにこしながら述べる。
「何時かあの時の復讐をすると」
「まさか」
「そう、そのまさかさ。君は今僕の復讐を受けているんだ」
「そうだったのか」
ここまできてようやくそれがわかった。
「それで」
「そう、私達も」
客達と所長が言った。
「私もなのですよ」
「貴方まで」
公爵が笑いながら名乗り出てきたのには正直驚いた。
「何と」
「私もですか」
「アデーレまで。そんな」
「それでですね」
「むっ」
続いてアルフレートが出て来て目を顰めさせる。
「では君も」
「そうです。安心されましたか」
「ううむ、ほっとしたような悔しいような」
「ははは、それでも楽しんでいたじゃないか」
「しかし一杯食わされた」
博士を見て述べる。
「どうやら君の勝ちだな」
「そうだね」
「ところで」
アデーレがイーダを側に置いて所長にそっと囁いてきた。
「私は」
「そうだね」
「待って下さい所長」
しかしここで公爵が姿を現わしたそしてアデーレに声をかける。
「フロイライン」
「はい」
「貴女には私が援助致しましょう」
「宜しいのですか?」
「何、芸術と文化を愛するのが我がロマノフです」
彼は言った。
「ですから私は貴女を」
「女優にして頂けるのですね」
「そうです。貴女ならすぐにでも」
「それじゃあ」
「はい、どうか御一緒に」
「畏まりました」
彼女も女優になることになった。最後に伯爵と奥方の和解だった。
「いや、済まない」
伯爵はバツの悪い顔をして妻に謝罪する。
「疑って悪かった」
「それだけかしら」
「ああ、わかってるさ」
憮然として述べた。
「貴夫人に声をかけたのも」
「ハンガリーの方ですわね」
「どうしてそこまで知ってるんだい?」
「何故かしら。それはね」
「うん」
奥方は優雅な笑みを浮かべながら何かを出してきた。その何かを顔につける。すると。
「あっ」
「そういうことよ。私じゃなかったら許さないところよ」
「君だったのか」
これが一番の驚きであった。
「まさかそんなことだったとは」
「そうよ。だから今は」
「うん、仲直りに」
「またパーティーに」
「おや」
妻にそう言われてふと思い出した。
「私の刑期は」
「勿論それも芝居だよ」
博士が笑いながら言ってきた。
「驚いたかね」
「いや、もう驚かないよ。それではこうもりの復讐の成功に」
「乾杯!」
皆でそのまま新年の宴に向かうことになった。大晦日のこうもりの復讐はそれで終わり今度は新年を祝う華々しい宴となったのであった。
こうもり 完
2007・1・1
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