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外伝 ドラゴンクエストV 勇者ではないアーベルの冒険
着ぐるみにまつわる思い出
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「アプリーン〜!」
「!」
「!」
着ぐるみに向かって、両手を広げて抱きつかれた。
着ぐるみからの視界では、相手の顔を確認できなかったが、声と体格から20代の女性のようだ。
「アプリン、かわいい〜。
写メとって、写メ」
「はいはい」
そばにいるもうひとりの女性が、アプリンに抱きついた女性をあきれて眺めながら、携帯電話を取り出して写真を撮っていた。
「よかったわね」
つきそっていた女性の声は限りなく冷たかった。
「別に」
「役得だったでしょ?」
周囲のスタッフ達は、女性の意見にうんうんと頷いていた。
俺は、役得とは思っていなかった。
着ぐるみはおおきいため、抱きしめられた感触を味わうことができなかったからだ。
仕事なので、不満はない。
残念とは思ったが。
「別に」
俺の返事に
「やはりそうだったのか」
「20代だったからな」
「奴にはもったいない」
周囲の反応がおかしい。
「なんですか、みなさんの感想はおかしいですよ」
「おまえは、ロリコンじゃないのか?」
「違います」
「本当のことを言って欲しい。別に犯罪をしていなければ、文句は言わない」
「だから、決めつけないでください!」
「県内の高校生の制服を全ておぼえていると聞いたが?」
「友人の話です!」
俺の友人の中で制服マニアがいたので、ある程度覚えさせられたが、全部ではない。
「ショッピングモールで中学生の女の子と手をつないで買い物している姿を、目撃されているぞ」
「いつのこと?」
「今年の6月12日、日曜日の午後3時頃」
後輩の女性が、完全記憶保持者のような記憶力を披露する。
「覚えがないな、いや、馬中先輩の娘さんだな」
自分の課にいる先輩の名前を挙げる。
「ほう、馬中夫妻の公認ですか?」
「いや、違う。
買い物をしていたときに、偶然馬中先輩とその娘さんに出会っただけだ。
そのとき、馬中さんに急用が出来たので、娘さんを預かっただけだ」
「でも、娘さんと手をつなぐ必要はなかっただろう?」
別の人から質問の声が出る。
「娘さんから買い物の相談を受けて、店の場所がわからないといったら、誘導されただけだ。
娘さんは携帯を持っていないから、はぐれないようにしただけだ」
「何を買ったのですか?」
後輩の女性が質問する。
「馬中先輩に聞いてくれ、父の日のプレゼントだ」
馬中先輩の娘からは黙っていてくれと言われたが、ロリコン疑惑を否定するためだ。
許してもらえるだろう。
イベントが無事終了し、片付けを行っていると後輩の女性から声を掛けられた。
「ところで、先輩の許容範囲は何歳年下までですか?」
「考えた事がないなあ」
「6歳年下とかは?」
「微妙な数字だな」
「だめなのですか・・・」
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