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外伝 ドラゴンクエストV 勇者ではないアーベルの冒険
ロマリア王立冒険者養成所卒業式での演説
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アーベルは聴衆の反応に満足そうに頷くと、後ろを振り返る。
アーベルの視線の先には、ロングス財政担当官の姿が映った。
ロングスは、大きな巨体を振るわせながら、なんとか自制をしているが、今にも襲いかかろうとしている様子だった。
だが、この場所で襲いかかることは出来ない。
それを両方が理解しているから、アーベルはにっこりと微笑むと、自分の席に戻っていった。
「いやあ、現場に行って、話を聞きたかったですね」
ジンクはアーベルの話を聞き終わると、残念そうな表情を見せた。
「仕事だったのだろう、内容は聞いてなかったが」
アーベルは疲れた表情でジンクに質問した。
「そうですね、無事に調査が終わったので報告しましょう」
ジンクは、束になった報告書をアーベルに手渡す。
「これは、・・・」
「ロングス財務担当官の不正蓄財に関する資料です」
アーベルは報告書を読みながら、ため息をついた。
「ロングスの不在を突いたわけか」
ジンクは頷いた。
ロングスは、レグルス財務大臣の失脚を知り、自分が後任となるためにいろいろと画策していたようだ、逆に自分から破滅に進むことを知らないで。
「では、俺の演説内容を入手したことも知っていたのか」
「ええ、ロングスが王様に演説を要請したときに、何らかの策略をおこなうと考えていました」
ジンクは嬉しそうな表情をする。
「だったら、事前に教えて欲しい。
演説に失敗したらどうするつもりだった」
ジンクは笑顔のまま話を続ける。
「上手くいったではないですか、急な対応は出来ないと言っていたにもかかわらず」
「昨夜考え直したのだ。
演説の内容自体は問題ないが、自分の立場がロマリア国王だから、それに合わせた内容を話す必要があると思ってね。
久しぶりの徹夜は疲れたよ」
「お疲れ様でした。
あまりに集中していたので、声をかけることが出来ませんでした」
アーベルはつかれた頭でしばらく考えると、表情を曇らせた。
「お前は、俺が原稿を直したのを見ていたのか」
「ええ、そうです。
おかげで、こちらも徹夜しましたが」
「やれやれ。
深夜に男の部屋に侵入するなんて何を考えているのだか」
「私を襲うことなど、ありえないと知っていますから」
「ああ、そうだな」
アーベルはつかれた体を無理に動かすようにして、寝室に向かっていった。
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