食堂政談
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海長が今後の航路予定表を持ってヤンの正面の席に座る。
軍は、軍閥を恐れて特に士官は長くても数年単位で人事異動に晒される。
それはヤン達も同じで、ヤンはこの航海の後統合作戦本部へ移動となり、アッテンボロー戦術長とアルテナ航海長は大尉昇進の後ヤンと同じく自由惑星同盟防衛大学校において戦略研究科にて勉強し、卒業後に少佐に昇進する事になるだろう。
パトリチェフ副長は少佐に昇進してこの船の艦長となり、オペレータである准尉と共にこの船に残る事になる。
出会いがあるなら別れもあるのだが、戦争をしている軍隊において別れがそのまま永久の別れになる事も多々ある。
事実、ヤンと同期の士官学校卒業生の内既に5%が戦死や行方不明になって永久の別れを済ませていた。
「構わないよ。
少し早いけど、私の下でよく尽くしてくれた。
上層部はきっと君に期待しているんだよ」
「艦長みたいにですか?
それよりも、よろしければ、先ほどの話を続きをお聞かせ願えないでしょうか」
すっとチャン・タオ上等兵が差し出した紅茶を嗜みながらアルテナ航海長が話の続きを促す。
なお、ヤンが見たアルテナ航海長の経歴データだと家庭の事情(父親の希望)で士官学校は戦略研究科と書いてあったので、彼女は本来別の学科に行きたかったのかもと思いながらとりとめのない話の続きを口にした。
「そうだね。
どうして自由惑星同盟と名乗ったのかって事さ。
新銀河連邦と名乗っても良かったのにね」
名は体を現す。
自由惑星同盟という国家は、「自由」な「惑星」の「同盟」という意味で、国家形態から言うと、連邦国家に当たる。
その為、同盟政府と同時に星系政府の自治権がかなり強くなっている。
まぁ、恒星間国家なんて広大な距離がある以上、中央集権国家なんて作れる訳も無く。
その点においては貴族を置いて領主とする銀河帝国とさして変わってはいない。
「銀河連邦と名乗らずにですか。
考えた事もありませんでした」
このあたりの理屈を考えて探るのが史学の面白さなんだよなぁなんて思いながら、ヤンは自分が昔調べた事を楽しそうに口にする。
やはり、艦長やるよりもこうやって誰かの為に無駄な学問を教えるのも悪くは無いなと思いつつ。
「自由惑星同盟はその設立当初の人口数から実質的な都市国家でしかなかったのさ。
何しろ設立時人口十六万人しか居なかったんだからね。
それが、まがりなりにも恒星間国家としての体を整えるようになったのは、銀河帝国との接触と今まで続く交戦からだ。
その為、同盟政府は最初は調停機関として始まったんだよ。
建国市民と後から来た市民の間を取り持つ形でね」
そこから複数星系を支配する恒星間国家に自由惑星同盟はなってゆく
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