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記した億の絶望
序章
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苛立から来る吐き気を覚えた。そもそもややが出来たのはあの男の誤算だ。椿を石女(うまずめ)と思い込んで手を出したのだから。定期的でないにしろ、椿には忌み日が来たというのに。もっとも、忌み日がくれば床からは出られない程の鈍痛に襲われる椿は、端から見ればいつものように病気で倒れているようにしか見えないのは確かだが。しかし、椿は石女だと認めた事は一度もない。大方椿にはそっちの知識が備わっていないとでも勘違いしていたのだろう。実際夜枷の知識は皆無だった。気づきもしないで椿の腹の中へ種を本能のまま奴は吐き続けた。椿も椿で子供欲しさと、知識の少なさでその行為を止めようともしなかった。その結果が、この様だ。死期を迎える命が私の目の前に横たわっている。
  こんなになっても疑いもせず彼奴の嘘を信じ込みやがって。あの腐れ野郎が戻ってくるかよ。やるだけやって女を捨てるのが野郎の十八番なんだ。面倒事が嫌いなあの男に、期待するだけ無駄だ。だいたい奴が旅好きな方向音痴だという言い訳を鵜呑みにする椿も大概大馬鹿者だ。彼奴は知っていたはずなんだ。椿は元々躯が弱い。産んだ後もそうだが、女自身に一番負担が掛かるのは産まれるまでの期間。女がその時望むのは相手方の存在、支えである。それを、懐妊の知らせを聞いた途端に次の旅の準備を始めやがって。ややに珍しい物をたんまり見せたい、この一言を言い訳に早々と立ち去った。隣に椿が見送りに立ってなけりゃあ、八つ裂きにしていたのに。今でもあの忌々しい背中が頭から離れない。今もし奴が顔を見せにきたら、きっと奴に襲いかかって嬲り殺すだろう。それ程までに京介への憎悪は膨らんでいた。
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