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とあるβテスター、奮闘する
投刃と少女
とあるβテスター、赤面する
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ターに全く非がないとは言い切れない。
元βテスターが1000人もいれば、中には自分がおいしい思いをすることだけを考えている人も、少なからずいるはずだ。

でも。キバオウの言い分は正論に見える一方、その裏にはかなりの私情が含まれている。
彼は『全プレイヤーは平等であるべき』と口では言ってる一方、その根底にあるものは、自分の一歩先を行くベータテスター達への嫉妬心だ。
そして。今まで経験してきたMMOにおいて、そういった人ほど、自分が利益や権力を得た途端、それに溺れるものだと相場が決まっている。もしも逆の立場なら、キバオウのようなタイプは真っ先に、彼の言うところである『卑怯もん』と同じ行動をしていたことだろう。

「その2000人は全員が全員、あんたの言う元ベータテスターのせいで死んだと?」
「そうやろが!ベータ上がりのアホテスターどもは、わいらに何の情報も渡さんで───」
「いいや。金やアイテムはともかく、情報ならあったと思うぞ」
そう言ってエギルが取り出したのは、羊皮紙を綴じた本の形をしたアイテム。
表紙には、丸い耳と左右三本ずつの髭を図案化した『鼠マーク』が。それは、このアイテムを製作したのがかの情報屋であることを示している。

βテスト時代、金銭と引き換えにありとあらゆる情報を売って歩いていたプレイヤー、通称『鼠のアルゴ』。
『奴は金さえ積めば自分のステータスだって売る』という噂通り、ボスのデータからプレイヤー個人の情報まで、対価さえ払えば何でも教えてくれる情報屋。
いつの間にチェックされているのかわからない上に、その情報《売り物》は下手な情報サイトより信憑性がある───と、客として接するならば頼もしい反面、敵に回すと厄介なことこの上ないプレイヤーだ。

そんな情報屋こと『鼠のアルゴ』が、どういう風の吹き回しなのか、βテスト時代のエリアマップやモンスター情報、クエストデータなどを記載したガイドブックを各地の道具屋に委託販売している。しかも無償で。
あのアルゴがタダで情報を提供していたというのには驚きだった。僕とシェイリが最初に到達した村で、二人分のアイテム補給を買って出たシェイリがこれを持ってきた時、何かの冗談じゃないかと思った程だ。
半分訝しげながらも中身を読んでみると、そこには確かにβテスト当時のデータが詳しく記載されていた。どうやら本当にアルゴが書いたものらしい。

……もっとも。表紙下部に書かれている『大丈夫。アルゴの攻略本だよ。』という宣伝文句には、そこはかとなく不安を感じられずにはいられなかった。
何か重大な誤植がありそうな気がしてならない。いや、そう思った理由はわからないんだけど。

「いいか、情報はあったんだ。なのに、たくさんのプレイヤーが死んだ。その理由は、彼らがベテランのMMOプレイヤーだ
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