投刃と少女
とあるβテスター、赤面する
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れるように、そういった光景はMMORPGの風物詩とも言ってもいい。
彼らは叩ける要素があれば何でもよくて、叩く対象の心情や都合なんてものを考えることはないんだ。
僕もいくつか他のMMORPGをやってきたから、世の中にはそういった人達がいるっていうのも身に染みている。
でも、それはあくまで“遊び”としてのゲームの世界の話であって。
実際に命が懸かってるこの期に及んでまで、こんな、こんな下らないことを───
「おるんやろ、ベータ上がりの卑怯もんが!はよう金とアイテムを並べて、地べたに頭ついて土下座しいや!」
───せっかく、せっかく場がまとまりかけてたのに……!
このままでは、まずい。
討伐部隊を組んでボスと戦うどころか、プレイヤー同士で協力するという体制そのものが崩壊してしまう。
最悪の場合、これを口実にベータテスター達に対する“処刑”が始まってしまうかもしれない。
「あくまで名乗り出ないつもりか、そんならそれまでや。こんな卑怯もんが潜んどるかもしれんパーティに命なんか預けられへん。パーティ組むっちゅう話はなかったことに───」
───どうする……?
せっかくディアベルが一纏めにした場の空気が、キバオウの登場によってバラバラになろうとしている。
ここは無理矢理にでも割り込んで、この男を黙らせるべきなのかもしれない。
今、僕が何かを言えば。それこそ『おまえがベータテスターか』と、キバオウの主張を正当化させる口実になってしまうかもしれない。
だけど、これからの攻略のことを考えるなら……
───いくしかない、かな……
このまま黙って言わせておけば、事態は悪化する一方だ。会議を円滑に進めたいなら、キバオウを黙らせる必要が出てくる。
今後、プレイヤー同士で協力してボス攻略に臨むなら。ベータテスターだとかそうじゃないとか、そんなことで確執を生んでる場合じゃないんだ。
そう思い、フードを目深に被り直し、キバオウの言葉を遮るべく立ち上が───
「発言、いいか」
「なんや!」
ろうとして、それは失敗に終わった。
僕が立ち上がろうとしたのと同時、どこからか聞こえた野太いバリトンボイスが、先にその場に割り込んだからだ。
今まさに立ち上がろうとしていた僕は、中途半端に腰を浮かせた状態になり、何とも格好のつかないまま再び座り込むのであった……。
そんな様子に気付いていたのか、隣に座るシェイリのクスクスという笑い声が耳に入り───ちょっと笑いすぎだって!鬱になるだろ!
シェイリに羞恥心をちくちくと刺激されながらも顔を上げれば、人垣を掻き分けてキバオウの前へと歩み出るプレイヤーの姿があった。
───お、おう……?
そのプレイヤーを視界に捉えた瞬間、僕はシェイリからの精神攻撃のこと
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