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とあるβテスター、奮闘する
投刃と少女
とあるβテスター、赤面する
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に、場違いに爽やかな笑みを浮かべている。

「オレはディアベル。職業は気持ち的にナイトやってまーす!」
その一言で周囲のプレイヤー達がどっと沸き、『職業システムなんてねーだろー!』『ほんとは勇者って言いたいんだろー!』などという声が投げかけられた。
さっきまで初のボス攻略会議ということで、この中央広場にはどこかピリピリとした空気が漂っていたのだけれど、その空気をあっという間に180度変えて場を和ませてしまうあたり、どうやらこのディアベルという剣士、こういったイベントごとを仕切るのには慣れてるらしい。
殺伐とした雰囲気を和らげるという意味では、こういうノリの人が一人くらいいたほうが、下手に緊張しなくて済むので助かる。
シェイリと並んで広場の隅に座った僕はそんなことを考えながら、ディアベルが本題を切り出すのを待った。

「……今日、オレたちのパーティが、あの塔の最上階に続く階段を発見した。つまり明日か、遅くても明後日には、ついに辿り着くってことだ。第1層のボス部屋に!」

───おお……。

ディアベルの言葉に周囲のプレイヤー達がどよめく中、僕は感嘆の思いを抱く。
第1層の迷宮区である塔は全20階建てで、僕とシェイリがさっきまで狩りをしていた場所が17階だ。
シェイリが両手斧使いとして覚醒してからは、ペア狩りにしてはだいぶ早いペースで進んできたつもりだったのだけれど、どうやら彼らのパーティはその何歩も先を行っていたらしい。

「オレたちは、示さなきゃならない。ボスを倒し、第2層に到達して、このデスゲームそのものもいつかきっとクリアできるんだってことを、『はじまりの街』で待ってるみんなに伝えなきゃならない」
ディアベルの熱弁に、周りのプレイヤー達が息を呑んだのが気配でわかる。

そして、

「それが、今この場所にいるオレたちトッププレイヤーの義務なんだ!そうだろ、みんな!!」
最後に一際大きい声でディアベルが叫ぶと、噴水広場がプレイヤー達の大喝采で包み込まれた。
明日か明後日にはボスと戦って死ぬかもしれないというのに、周りにそんな不安を微塵も感じさせない。
個人がバラバラに動きがちなMMORPGという環境であるにも関わらず、巧みな話術であっという間に士気を高揚させてしまった。
自ら騎士を名乗るだけあって、リーダーシップにはかなり長けているものがあるらしい。

───この人がリーダーなら、協力してボスに立ち向かうことも……

できるかもしれない、と思った矢先。

「ちょお待ってんか!」

やたら耳障りなダミ声による関西弁が、歓声を遮った。その一言によって歓声がぴたりと止み、広場が再び沈黙に包まれる。
みんなの士気がいい具合に上がったのに、わざわざこのタイミングで水を差す必要があるのだろうか、と思って
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