第16話 彼女の和室で眠るのは?
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しも、有希に取ってここは敵地……とまでは言いませんが、それでも自らのホームグラウンドではない以上、ここに留まって居ては余計なストレスを感じさせる結果と成る可能性もゼロではない。
ならば……。
俺は、少し、左腕に巻かれた腕時計に視線を向けた後に、有希に対して右手を差し出し、
「そしたら、帰るか」
……と短く告げました。それに、流石に昼食まで御馳走に預かる訳にも行きませんからね。
何故ならば、俺は、俺が元の世界に帰った後の事を、ここ水晶宮に依頼してから帰る心算ですから。当然、彼女自身に、その情報統合思念体の元に戻るか、それとも、それ以外の道を模索するかの選択肢を選んで貰ってから。
そして、もし、ここで昼食まで御馳走に成って仕舞い、その結果、以後の長門有希が水晶宮にメンテナンスや、生きて行く上で必要な生計の道を得る事に成ったとしたら、まるで、彼女を食事などに誘って接待したように思えて来ますから。
もっとも、それを言うのなら、俺が彼女と出会ってから続けて来ている食事すべてが、彼女に対する供応に当たるような気もするのですが。
食事の際に彼女が発して居る雰囲気は、非常に明るい、陽に分類される雰囲気で有る事は間違い有りませんから……。
有希が、差し出された俺の手を握りながら、来客用のソファーより立ち上がる。
そして、その手は……温かかった。
「おや、昼食は食べて行かれないのですか。今、玄辰水星と瑞希さんが準備をしていると思うのですが」
何故か意味不明な理由で、和田さんが、そんな俺達を引き止めた。
しかし、玄辰水星?
玄辰水星とは五曜星の一人。空に浮かぶ水星を神格化した存在だったと思います。確かに俺が暮らして居た世界でも、水晶宮の関係者の中に居た可能性は有りますが、俺のような下っ端には縁のない相手ですから、この場で、そんな人物の名前が出て来る事自体が不思議なのですが。
それに……。
「それに、午後からも有る人物と逢う約束が有りますから」
何か、ちょいと弁解じみた台詞を口にする俺。
但し、その際に、何故か俺と右手を繋いだ少女から、非常に残念そうな気が発せられたような気がしたのですが……。
「そうしたら、一応、もう帰るけど、有希はそれで構わないな」
俺は有希に、そう念を押すように聞く。それに、もし、ここで少しでも否定的な雰囲気を感じたら、その時は水晶宮の方で昼食を御馳走になってから帰ったら良いだけですから。別に、どうしてもここで食べたらマズイ理由が有る訳では有りません。
しかし、有希は少し名残惜しそうでは有りましたが、それでも俺の言葉にコクリとひとつ首肯いてくれました。
「そうしたら、用事が
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