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ヴァレンタインから一週間
第16話 彼女の和室で眠るのは?
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「わたしが手伝う」

 俺の右隣に座る少女から、普段の彼女そのままの口調で発せられた一言は、少しばかり古いタイプのエアコンが発する送風に乗って、この流行っていない探偵事務所内に広がって行った。

 確かに彼女なら、伝承に登場している()()()()()と重なる部分が大きい。つまり、この事件が何らかの神話的追体験の可能性が高い以上、本来ならば絶対に必要な登場人物だと言う事です。
 確実に、そして、出来るだけ安全にラゴウ星を封じる心算なら。
 そうして、間違いなく彼女自身の未来の為にも、ラゴウ星が顕われる異界化空間に連れて行くのが、一番正しい判断だと思います。

 しかし……。

「それは危険」

 俺は、有希を身体の正面に成るように自らの身体を動かしながら、そう言った。
 少し冷たい、と取られかねない口調で……。

 そう。確かにこの作戦は流石にあまりにも危険過ぎます。成功する確率。俺が無事に戻って来られる確率は、……伝承を無視するのならばかなり低いはずですから。
 更に、

「それに、有希には、俺が前に言った言葉の答えを貰っていない」

 俺に取って、今の長門有希と言う少女はこの世界と等価。この言葉を聞いた上で、彼女がラゴウ星と戦う現場に付いて来る事を、俺に納得させる程の理由が無ければ、彼女を死地に連れ得て行く事は出来ません。

「最後は未来を託す相手がいなくなる」

 俺の最後の言葉に対して、有希から少し訝しげな気が発せられた。
 確かに、これでは意味不明が過ぎますか。それならば、

「もし、この作戦が失敗して俺と有希、二人が虚空に消えたとする。すると、俺の代わりは居る。せやけど、有希の代わりはいない」

 そう有希に対して告げる俺。しかし、

「わたしの代わりは存在する。わたしには、思念体に情報のバックアップが存在している。むしろ、代わりが存在していないのは貴方の方」

 普段通り、抑揚の少ない平坦な話し方で、俺の言葉に対して、間髪入れずに否定の答えを返して来る有希。
 但し、彼女から感じる雰囲気は、話し方、そして、その表情とは全く違う感情を指し示していたのは間違い有りません。
 そう。多分、彼女は未だ、自分は造られた存在だと思い込んでいると言う事だと思います。
 確かに、和田さんの話からもそれは事実でしょう。しかし同時に、俺に取っては彼女の代わりが出来る存在は、この世界の何処を探したとしても存在していない、……と言う事もまた事実なのですが。

「判っていないのは、オマエさんの方やで、有希」

 俺は、感情を表に現さず、そして出来るだけ穏やかな雰囲気で、ゆっくりと有希に対してそう言った。
 彼女を、自らの瞳の中心に捉えながら。

「俺の代わ
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