18部分:第三幕その一
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あった。
「いやあ、飲んだものだ」
「所長もですか」
「何だ、君もか」
ここで看守も飲んでいることに気付いた。
「楽しくやっているな」
「ええ、まあ」
にこにこと笑いながら言葉を返す。
「結構なことだ」
本当に怒りはいない。とんでもない刑務所と言えばとんでもないことである。
「伯爵も楽しんでおられるようで」
「ええ、まあ」
伯爵のふりをしているアルフレートはそれに応えた。
「これはいい酒ですね」
「そうでしょう。まあ八日間ですがごゆっくり」
「刑務所でなければもっといいのですがね」
「ははは、それは言わない約束でお願いしますぞ」
「わかりました。では」
ここでまたベルが鳴った。
「おや、来客か」
「新年早々何とまあ」
所長と看守はベルの音を聞いて顔を上げた。
「まあいい。誰かな」
「はいです」
「所長さんはおられますか」
そこにイーダとアデーレの姉妹がやって来た。所長は二人を見て目を少ししばたかせた。それから述べた。
「おや、貴女達は」
「はい」
「実はシュヴァリエさんこと所長さんにお願いがありまして」
「いえ、私はシュヴァリエでは」
「いえいえ、存じていますので」
「私達のことも御存知ですし」
「ううむ、しまった」
それを言われてはどうしようもない。迂闊であった。
「ですよね」
「ええ、まあ」
仕方なくそれを認めることにした。腹を括ったのであった。嫌々ながら。
「シュヴァリエさんというと」
「ああ、君には関係ない話だよ」
所長はそう看守に対して述べた。
「それでだねフロッシュ君」
「はい」
そのうえで彼の名を呼んで言う。
「席を外してくれ給え。ワインを持ってね」
「わかりました。ではチーズも持って」
「宜しくやっておいてくれ」
「ええ、では」
こうして彼は本当にワインとチーズを持ってその場を後にした。この時所長はアルフレートのことを酔ってそこまで考えておらずそのままにしていた。
そして二人に顔を戻す。そして問うた。
「それでですな」
「ええ」
イーダがにこりと笑って彼に応える。
「私に何の御用件で」
「実はですね」
イーダはそれを受けて話をはじめた。まずはアデーレを右手で指し示した。
「実はうちの妹は女優ではないのです」
「あれっ、そうなのですか」
自分も化けていたのでこれには特に驚かない。
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