第百十八話 瓦その七
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「ああした奴も罪を見極めればその時は」
「首を刎ねますか」
「そうする、必ずやな」
『しかしあ奴は中々隙を見せませぬな」
「そうじゃな、悪評の高い奴じゃがな」
「ですがそれでもですか」
「そこが狡賢いのじゃ」
崇伝の頭のよさはそうしたものだというのだ。頭がいいといってもそれは色々でありその中にはこうしたものもあるのだ。
だから信長は石田についても言うのだ。
「佐吉はまことによき奴じゃ」
『頭と心も備わっているからですか」
「そうじゃ。それにじゃ」
石田のよきところはまだあった、それは何かというと。
「あれで武勇も出来るな」
「武勇もですか」
「命を捨てることも惜しまぬ、ならばじゃ」
「戦も出来るのでありますな」
「やらせてみてもよい」
石田のそういうところも見て言う信長だった。
「あれで中々やってくれるであろうな」
「ううむ、顔を見るとそうは思えませぬが」
「御主が顔のことを言うな」
信長は羽柴の今の言葉には思わず笑って言った、そして彼のその見事な猿面を見ながらこうも言ったのだった。
「その顔でおなごをたらしこむのも上手らしいではないか」
「いや、それがしが大事なのはまずは」
「ねねというのじゃな」
「はい、女房は第一で」
「では第二は誰じゃ」
流石に信長は鋭い、羽柴に逃げる隙を与えずこう切り返した。
「何処の誰じゃ」
「それは」
「今度の何処の誰を囲おうとしておる。それとも花柳に行っておるのか」
「花柳はとても」
羽柴は花柳と聞くと顔をやや必死に左右に振った、そしてこう信長に述べた。
「あれは恐ろしい場所なので」
「病か」
「あそこから瘡毒が流行っているとか」
「その様じゃな。あれはおなごから罹る」
「あれに罹っては命が幾つあっても足りませぬ」
既に瘡毒は日本にも来ていた、室町の頃に都で大層流行り多くの者が苦しんで死んでもいるのだ、それで羽柴も言うのだ。
「それがし、ああした病で死にたくはありませぬ」
「わしもじゃ、他の家臣達にも言っておこう」
「さもなければですな」
「家臣が病に罹ることを放っておいては話にならぬ」
信長にしても捨てておけない話だった、それでだった。
「手は打っておこうぞ」
「さすれば」
「触れを出す、案外虎之助辺りが危ういのう」
加藤の名前がここで出た。
「あ奴は案外罹りそうじゃ」
「虎の話ばかりしていてもですか」
「そんな気がする。鼻が欠けたト虎なぞ迫力も何もない」
加藤の虎の話は信長も聞いていえ言うのだった。
「ましてや頬が腐ってじゃ」
「そしてですな」
「そこから歯が見えるのはおぞましいのう」
信長も瘡毒は見ていた、それに懸った者が身体が無残に腐り死んでいく有様を見るのは彼にしてもなのだ。
「戦
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