SAO編
episode7 こんな自分にできること2
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トロイ・ハンド》。骨槍にかかるダメージ量は、俺の虚弱なアバターでも凄まじい量のはず。
俺の目が…何度も『武器破壊』を見てきたその目が、骨槍の耐久度を見通す。
あと、少し。おそらく、あと数秒あれば、確実。
だが、その思いを聞き届けてくれるほど、敵は甘くなかった。
「……っ…!!!!」
尾が、再び意志を持って動き出した。
瞬間、世界が減速する。減速してなお凄まじい速さと分かる、振り下ろし。
床へと叩きつけられる体。
全身に走った衝撃…先の薙ぎ払いの何倍もの衝撃に、確信する。
このダメージでもう、俺のHPはゼロになる。ゲージが減るわずかの猶予の後、俺は死ぬ。
瞬間。
「うおおおおおおっ!!!」
全力を込めて、吼えた。
ゲージがゼロになるまでの、ほんの一瞬の隙間に放つ、《デストロイ・ハンド》のもう一つの効果…「最後に区切りを入れることで、これまでのダメージを倍加する」力。凄まじい…俺がこの世界で経験した中で、最も激しく、美しい蒼い光が迸る。
はじけ飛ぶ、巨大な、ポリゴン片。
響く重厚な爆砕音と、そしてその中に紛れた、軽い破砕音。
………ボスの尾骨、そして俺自身が、砕けた音。
はは。死んじまったか。ソラに為に、俺は生きなきゃいけなかったのにな。これで「蘇生クエスト」の謎も謎のままだ。いや、ソラだったら寧ろ「ここで男を見せてこその『勇者』だっ!」って褒め
たかもな。よくは分からんが。
砕けて…死に逝くその瞬間、最後に思う。俺は、出来たかな、と。ソラの果たすべきだった、『勇者』の役割を、代わりに果たせただろうか、と。
(……いや、ここで死ぬ様じゃ、とても代わりとは言えないか…)
かろうじて保たれた視界が、砕けゆく左腕をとらえる。ぼろぼろになった、しかしまだその存在をしっかりと保った手甲…《フレアガントレット》。俺には、出来過ぎの防具だったよ、リズベット。もしかしたらこの先誰かが使ってくれるかもな。俺の遺品ってわけだ。もう消えていきかけた右手から抜ける銀色の輝きは、《カタストロフ》。こいつにはずっと世話になりっぱなしだったな。俺がソラに振りまわされた分を払っても、十分おつりがくるくらいだ。全く、しっかりと借りは返しやがって。
俺の意識が、どんどん遠のいていく。死ぬっていうのはどういう感覚なのかと思っていたが、どうやらこの極度の疲労と緊張で先に意識の方が落ちてしまいそうだ。文字通り一生に一度しかできない体験を棒に振ることになるが、まあ仕方ないか。
(…ああ……)
そして、消え逝く意識の中。
最後に残った、左手の薬指、その先。
七色の宝玉の嵌った指輪が、キラリと光るのを見た気がした。
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