14部分:第二幕その五
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はそんな彼を見て思った。
(結構手強いかも)
(これだけの美人だ)
彼の好みであった。実は自分の妻とも恋愛結婚だったことを忘れている。実は結婚の話が出た時に彼女の絵と実際にこっそりと見た素顔を見てすぐに惚れ込んだのである。そのことをこの時は完全に忘れていたのだ。
(ゆっくりとね)
「それでですね」
ゆっくりと勝負に出て来た。
「何でしょうか」
「これですが」
「あら」
出してきたのはさっきの時計であった。あえて奥方に見せびらかせる。
「この時計ですが」
「あらためて見ると本当に綺麗ですね」
「そうでしょう。この時計はそれだけではないのです」
「といいますと」
「実はですね」
彼は言う。
「時間も正確なのですよ」
「そうなのですか」
(さて、どうするつもりかしら)
時計を使ってどうするのかと探りだした。
(これを使って)
「数えてみましょう」
「数える」
「はい」
伯爵はにこやかに笑って言ってきた。
「数えるのですよ。この時計の時間を」
「どうやってですか?」
「まず貴女は御自身の心臓の鼓動を数えて下さい」
彼はこう言ってきた。
「私はこの時計の時間を数えます。それでどちらの時間が正確なのか確かめましょう」
「そうしてその時計がどれだけ正確か見るのですね」
「そういうことです」
彼は述べた。
「これでどうでしょうか」
「いいですわ、それでは」
彼女は笑みを浮かべてそれに応えてきた。
数えてみる。暫くして伯爵が言ってきた。
「三百ですな」
「あら」
だが奥方はそれを聞いておかしそうに笑ってきた。
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