投刃と少女
とあるβテスター、戦慄する
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は投げナイフだから、わたしはもっと強いのを持たなくちゃね〜』
今使っているレイピアでは不満なのか、と問いかけた僕に対し、彼女はこう答えた。
僕が使うスキルの都合上、細剣と投剣のペアでは火力不足になるのを懸念しての判断らしい。
それなら一緒に選ぼうかという話になり、僕たちは数時間ぶりにあの武器屋へと足を運んだのだった。
SAOでは使用する武器スキルをセットできるスロット数には上限があるため、本来なら無闇に何でも上げるというのはおすすめできない。
だけど、その時の僕たちのレベルはお互いに上がったばかり……つまり、2になったばかりだった。
その程度なら熟練度も大して上がっていないし、他の武器に転向したとしても十分間に合う段階だ。
そんなわけで、彼女に初心者向けの武器をいくつか勧めてみた……のだけれど。
彼女の武器選びは、思った以上に難航してしまうこととなった。
ちなみに武器に対する彼女のコメントは以下の通りだ。
片手剣→えー?レイピアとあんまり変わらなくない?
曲刀→えー?片手剣と(以下省略)
短剣→ちょっと軽すぎないかな?
片手棍→うーん、あと一押し欲しいかなー?
槍→これって後ろから攻撃する武器だよね?ユノくん前に出るのあんまり得意じゃないんでしょ?
両手剣→あ、ちょっといいかも
両手斧→これいいかも!ユノくんユノくん!わたしこれにするね!
こういった流れを経て、めでたく(?)彼女は両手斧使いとして生まれ変わったのだった。
そこまではよかった。そこまでは。
見た目に似合わず重そうな武器が好きなんだなぁ、と呑気に考えていたのも束の間。
試し切りと称して『はじまりの街』周辺フィールドで行った初戦闘で、僕は戦慄を覚えることとなる。
『あはっ、これすごーい!見て見てユノくん!こんなに切れるよー!』
どうやら彼女に合った武器だったようで、レイピアを使っていた時よりも動きのキレが増している。
それは結構。それは大いに結構なんだけど、一つだけ言わせて欲しい。
───シェイリさん、あなたは何故そんなに楽しそうなんでしょうか?
自分の背丈の半分以上もある両手斧を振り回し、清々しいまでの笑顔で青イノシシを斬殺していく中学生くらいの少女(自称高校生)。
僕はというと防具屋で買ったばかりのフードを目深に被り、彼女のバーサーカーっぷりに脅えた顔を見せまいと必死なのであった……。
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