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とあるβテスター、奮闘する
投刃と少女
とあるβテスター、戦慄する
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はずのシェイリは、僕がほんの少し意識を逸らした隙に、例のふにゃっとした表情に戻っていた。
口調も間延びしたものに戻っており、さっきまでの真剣な表情は何処へ……と、思わずにはいられなかった。

「じゃあ、わたしも一緒に行こっかな。ユノくん一人じゃ心配だもん」
そして彼女は、いともあっさりと答えを出した。
一人でうじうじ悩んでいた僕が馬鹿らしく思えるほど、簡単に。
本当に命が懸かってるって理解してるのだろうかと疑わしくなってしまうくらい、あっけなく。

「……いいの?」
「だめだったら言わないよー。それにユノくん、守ってくれるんでしょ?」
「………」

───あ、やばい泣きそう。

正直断られると思っていただけに、彼女が即決して───しかも、僕を信じて───くれた時、不覚にも涙が出そうになってしまった。
心のどこかで言い訳を捜してばかりだった僕を、迷う素振りも見せずに信頼してくれた。
そんなシェイリのにへらとした笑い顔を見ただけで、徐々に視界が霞んで───ってやばい、本当に泣く!

───いやいやだめだってこんな場面で泣くとか恥ずかしいなんてレベルじゃないどうにか誤魔化し

「ユノく〜ん?どうしたの?」
「な、なんでもな……ひっ」
……無理でした。思いっきりしゃくり上げてしまった。
シェイリさん、その子供を暖かく見守るような目をやめてください……。


────────────


そんなこんなで。僕とシェイリはあれから一ヵ月経った今となっても行動を共にしている。
正直な話、あのまま彼女を置き去りにしてソロでやっていたら、僕は今頃きっと精神的に病んでしまっていたと思う。
SAOはただでさえ他のゲームと違って集中力が必要なのに、精神的に不安定な状態で無理に戦おうものなら……。今頃死んでいたとしても、それは大袈裟な話じゃないだろう。

僕はあの日の出会いに感謝している。
あの日彼女と出会わなければ、デスゲームとなったSAOで今日まで生きていられたかわからない。
下手をすれば『はじまりの街』の宿部屋に篭りっ放しだった可能性だってあるんだから。
誰かが隣にいるだけで精神的にここまで楽になるものなんだな、としみじみ思う。

そう、僕は彼女に感謝している。
最初に出会った日からずっと僕のことを支えてくれて、今や良きパートナーとも呼べる間柄になった彼女に。

───そこまでは、

「……そこまでは、いい話だったんだけどなぁ」
「何がー?」
「何でもないです……」
自身の得物───ツーハンドアクス+4という非常にゴツい武器を愛しげに撫でる彼女に、僕は何も言えなかった。

……あの後。僕と正式にパートナーを組むという段階になって、彼女は武器の使用変更を申し出た。

『ユノくんの武器
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