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とあるβテスター、奮闘する
投刃と少女
とあるβテスター、戦慄する
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と、シェイリは敵に最後の一撃をお見舞いした。
武器の重さと身体の遠心力を利用した横薙ぎが、ルインコボルド・トルーパーの無防備な胴体を横一線に引き裂く。
ついさっき僕を縦真っ二つにしようとしていた亜人型モンスターは、無邪気な少女の手にって横真っ二つにされ、ポリゴンの破片となって砕け散った。

「えへ、気持ちよかったぁ」
「……お、おつかれ」
戦闘の余韻に浸っているのだろう、恍惚とした表情で得物である両手斧を撫でる彼女の姿を見ながら、僕はこう思わずにはいられなかった。

どうしてこうなった、と―――


────────────


事の発端は、あの“はじまりの日”だ。
このゲームのクリア条件はただ一つ、アインクラッド第100層をクリアすること───そう言い残して、茅場明彦が操るアバターは姿を消した。
その場にいたプレイヤー達は暫くの間、呆然とした表情で茅場のいた空を見上げたまま……

「……い、いやぁぁぁぁ!」
「っ!?う、うわあああああっ!!」
誰かが上げた小さな悲鳴を切欠に、水に石を投じた時の波紋のように、パニックが伝染していった。

―――まずい、このままじゃ……!

幸い、通行不可オブジェクトは解除されたようだ。パニックに巻き込まれる前に一旦この場を離れようと、さっきまで一緒だった彼女の姿を捜す……が、うまくいかない。
“さっきより目線が低い”せいで、他のプレイヤーがブラインドとなって辺りを見回せない。
それに、彼女も“さっきまでとは姿が違う”はずだ。僕が見たところで彼女だと認識できるかどうかわからない。
恐らく向こうも僕を捜しているはずだ。この喧騒の中、お互いが各々動き回ってしまっては合流するのが困難になってしまう。

【合流しよう。最初に会った路地で待ってる】

そう考えた僕は彼女宛てに簡潔なメッセージを送り、一足先に中央広場を出ることにした。
薄情に思えるかもしれないが、このままここに留まっていたら周囲にあてられ、何も考える余裕がなくなってしまいそうだったからだ。


────────────


「お待たせ〜……ユノくん?」
「……へ?シェイリ?」
「そうだよー?」
数分後。最初に出会った路地でシェイリを待っていた僕は、無事に彼女と合流することができた。
……のは、いいんだけど。正直言って予想外だった相手の姿に、間の抜けた声を出してしまう。

「?ユノくん、どうしたの?」
「えー……いや、なんていうか……」
間延びした、気の抜けるような喋り方。見紛うことなくシェイリ本人だ。それはいい。
だけど。20代前半のお姉さんに見えていたさっきまでの姿とは違い、彼女の“現実世界の姿”はあまりにも幼くて。
そう、これはどう見ても……

「……中学一年生くらい?
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