暁 〜小説投稿サイト〜
こうもり
12部分:第二幕その三
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話

「どうされたのですか?」
「こちらのルナール侯爵がですね」
 彼は集まってきた客達に対して今の話を言うのであった。
「仰ったのですよ。こちらのオルガさんが御自分の家のメイドにそっくりだと」
「おや、それは」
「また面白い」
「そうですね。面白いですがエレガントとは言い難いですな」
「むっ」
 流石にロマノフ家の縁者に言われては黙るしかない。何しろハプスブルク家に匹敵する欧州きっての名門である。それでは伯爵では太刀打ちできない。それに今は楽しい宴の場、ここは笑われるのがいい、それを自分も楽しむのがいいと伯爵も理解した。そこはやはりウィーンの男であった。
「確かにこれは失礼をしました」
「そうです」
 公爵が彼に言う。
「しかし本当にそっくりだ」
「では侯爵様」
 アデーレはにこやかに笑いながら彼に声をかけてきた。足取りも軽く。
「私からも言わせて頂くことがありますわ」
「それは一体」
「ご忠告です。よく御覧になられるよう」
「人をですか」
「そう、色々な人を。宜しいですわね」
「はあ」
「この上品な手を」
 絹の手袋に包まれた手を見せる。当然ながら手袋もレンタルである。
「この華奢な足も」
 からかうように膝まで見せる。これははったりで中々肉付きがいい。
「都の言葉遣いも細い腰もメイドのものでしょうか」
「いえ、それは」
 おかしいと思いながらも頷く。
「全くもって」
「そうですわね」
 そして今度は気取ったポーズを取ってきた。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ