12部分:第二幕その三
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」
「どうされたのですか?」
「こちらのルナール侯爵がですね」
彼は集まってきた客達に対して今の話を言うのであった。
「仰ったのですよ。こちらのオルガさんが御自分の家のメイドにそっくりだと」
「おや、それは」
「また面白い」
「そうですね。面白いですがエレガントとは言い難いですな」
「むっ」
流石にロマノフ家の縁者に言われては黙るしかない。何しろハプスブルク家に匹敵する欧州きっての名門である。それでは伯爵では太刀打ちできない。それに今は楽しい宴の場、ここは笑われるのがいい、それを自分も楽しむのがいいと伯爵も理解した。そこはやはりウィーンの男であった。
「確かにこれは失礼をしました」
「そうです」
公爵が彼に言う。
「しかし本当にそっくりだ」
「では侯爵様」
アデーレはにこやかに笑いながら彼に声をかけてきた。足取りも軽く。
「私からも言わせて頂くことがありますわ」
「それは一体」
「ご忠告です。よく御覧になられるよう」
「人をですか」
「そう、色々な人を。宜しいですわね」
「はあ」
「この上品な手を」
絹の手袋に包まれた手を見せる。当然ながら手袋もレンタルである。
「この華奢な足も」
からかうように膝まで見せる。これははったりで中々肉付きがいい。
「都の言葉遣いも細い腰もメイドのものでしょうか」
「いえ、それは」
おかしいと思いながらも頷く。
「全くもって」
「そうですわね」
そして今度は気取ったポーズを取ってきた。
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