11部分:第二幕その二
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第二幕その二
「失礼、私の聞き間違いでした」
「いえいえ」
「ちょっと姉さん」
「何?」
「ばれそうだったじゃない」
「御免御免」
アデーレに囁いて謝る。そして話は本題に入った。
「それでですね」
「ええ」
公爵がにこやかにイーダに応える。
「こちらが新進女優のオルガ嬢です」
「オルガさんですか」
「はじめまして」
オルガに化けたアデーレは優雅な仕草で挨拶をする。意外とさまになっている。
「またお美しい。素晴らしい女優になられるでしょう」
「有り難うございます」
アデーレは礼を述べる。公爵はさらに言う。
「私は女優さんが好きでしてね」
「そうなのですか」
「後でじっくりとお話しましょう。それでは」
「はい。それではまた」
二人は公爵の前から姿を消した。博士はそれを見届けてから公爵に囁いてきた。
「あのオルガ嬢ですが」
「はい」
説明は続く。
「実は今宵の舞台の主役の家のメイドなのですよ」
「そうなのですか」
公爵にとっては意外な事実であった。面白そうに博士の話を聞いている。
「そうです。あれで賢い娘でして」
「成程」
「彼女はこれからも上手く動いてくれますよ。御期待あれ」
「わかりました。では楽しみにさせて頂きます」
「はい、どうぞ」
「殿下」
ここで華麗な制服を着た従者が公爵のところにやって来た。どうやらこの公爵はロマノフ家に縁のある者らしい。今殿下と呼ばれたからだ。
「ルナール侯爵が来られました」
「ルナール侯爵!?」
公爵はその名を聞いて首を傾げさせた。
「ルナール侯爵かね」
「はい」
従者はまた応える。二人はロシア語で話をしているが博士はその意味がわかっていた。
「誰かな」
「公爵」
ここで博士は公爵にそっと囁いてきた。
「その主役ですよ」
悪戯っぽく笑って述べた。
「彼がですか」
「はい、ですから御安心下さい」
「わかりました。では」
最後はロシア語に変えて従者に顔を向けてきた。
「お通ししてくれ」
「わかりました」
ここのやり取りはロシア語である。従者はドイツ語はわからないがロシア語はわかっていた。
「面白そうですな」
「面白くなります」
博士の返事は自信たっぷりといった感じであった。
「御期待あれ」
「ではでは」
「御主人様」
すぐに従者は戻って来た。かなり早い。
「侯爵様です」
「はじめまして、侯爵」
本当は伯爵の侯爵はフランス式の礼で公爵に挨拶をしてきた。
「ルナールであります」
「フランスの方ですな」
「はい
(顔はオーストリアだけれどね)
博士は彼を見て内心ほくそ笑んでいる。しかしそれを口には出さない。
「オルロフスキーと申します」
今度は公爵は一礼して
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