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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第十話「剣精霊は銀髪少女」
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私もシムルグを失ったら同じようにショックを受けるだろうが、と言葉を続けるエリスに首を振る。


「いや、それがどうやら自室にはいないらしい。なにか心当たりはないか?」


「む……」


 しばし顎に手を当てて考え込む。


「……そういえば、今日の午後に学園都市で〈軍用精霊〉の契約式典(セレモニー)があったな」


「契約式典?」


「ああ。学院生の中から志願者を募って、〈軍用精霊〉と契約させるのだ」


 要するに軍のスカウトだ、とエリスは説明した。


 軍用精霊と契約を交わした学院生は以後軍属とされている。強力な精霊を手に入れる代償として、騎士団からの要請があった場合には直ちに駆けつけなければならないらしい。


 まあ、当然だな。何をするにしても代価というのは存在する。等価交換なくして世界は回らないのだから。


「強力な精霊である〈軍用精霊〉を欲しがるものは多い。軍属になると色々と面倒だが、それでも契約できるとあって志願する者は後を絶たない。もともと精霊騎士になることを目的として学院に入学した者も多いからな」


「契約者の選出方法は?」


「当然――精霊剣舞だ」


 対戦方法は精霊使いが入り乱れてのバトルロワイヤル。オレデシア騎士団の市民へのデモンストレーションも兼ねているため、開催場所は元素精霊界ではなく学園都市の競技場で行われるらしい。


「契約精霊を失った彼女が今回の契約式典に志願した可能性はあるな」


「……その式典の会場というのはどこで開催される?」


「たしか、学院都市のオリビエ通りを真っ直ぐに行ったところに会場があったはずだが」


「ふむ……わかった。情報感謝する、エリス」


 俺はエストの膝裏に手を入れて横抱きにすると、窓枠に足を掛けて跳躍した。


「これからクレアの元に向かう。飛ばしていくから、すまないがしばらくそのままでいてくれ」


「了解です、リシャルト」


 コクリと頷いたエストはおもむろに俺の首に手を回す。認識阻害結界を張り家々の屋根を飛び回る俺はエストの意外な行動に目を丸くした。


「どうした?」


「お互いの重心が近接しますので、この方が安定します」


「いや、それはそうだが……まあいいか」


 取りあえずエストのことは思考の隅に追いやり、探索魔術でクレアの居場所を探る。俺の探索魔術の最高範囲は半径二百キロのため、おそらく引っ掛かるだろう。


 高速で流れる景色を背にしながら、俺たちはクレアの元に向かった。


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