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失われし記憶、追憶の日々【精霊使いの剣舞編】
第十話「剣精霊は銀髪少女」
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女の子をベッドに連れ込んで――」


 ビョオオオ……リンレットの絶対零度のような冷たい視線が突き刺さる。精神的にも、物理的にも。


 いつの間にか窓には霜が降りており、部屋のなかにブリザードが吹き荒れたかと思うと、突然フェンリルが狼の姿で現れる。


「いや、ちょっと待て。冷静に話をだな――」


「聞く耳持ちませんわ、このヘンタイ――――っ!」


 魔氷精霊が咆哮を上げて襲いかかってくる。咄嗟に対物障壁を張ろうとするが、ストックがないことに気がついた。


 しまった、昨夜に使ったのだった!


 凍結魔術の利点は事前に術式や詠唱を唱えて発動前の段階で凍結することで、始動キーワードを唱えるだけで発動することにある。だが、同じ術式は一度までしか保存できないこと欠点があるのだ。


 取り合えずベッドから飛び降りようと腹筋に力を入れたときだった。


 エストが静かに立ち上がり、俺を庇うように前に立った。


 ぐるるーっと鋭い牙を剥いて跳びかかる白狼の鼻先にスッと手を翳す。


 ピタッ、とフェンリルがその場に凍りついた。


「うぉ……ん……」


「ひかえなさい。魔氷精霊ごときが、この〈魔王殺しの聖剣〉に刃向かいますか?」


 エストが無表情で静かに語りかけた途端、フェンリルがガタガタと震え出した。


「おすわり」


 ちょこん。


「お手」


 ぽふっ。


「いい子いい子」


 なでなで。


 唖然するリンスレット。ここにきてようやく、彼女の正体に気がついたようだった。


「あなた……ひょっとして精霊ですの!?」


「はい。私はリシャルトの契約精霊」


 大人しく座り続ける氷魔精霊の頭を無表情で撫でるエストはコクンと頷いた。


「まあ、なんだ。とにかくそういうことだから。――それはともかく、エストは服を着なさい。服の構成くらいなら出来るだろう。というより、なぜ裸なんだ?」


「裸ではありません、リシャルト。ニーソは穿いています。この格好の方が喜ぶと思いました。さすがに素足をさらすわけにはいきませんが」


「……君の気遣いは痛み入るが、場違いだと知れ。とにかく、そこのリンスレットが来ている制服を構築しろ。それなら外に出ても違和感がないはずだ」


「了解しました」


 エストの身体が一瞬淡い光に包まれ、次の瞬間には女子の制服を着ていた。エストの身なりに関してはこれで良し、と。


「さて、察するにここはリンスレットの部屋のようだが、わざわざ運んでくれたのか?」


「はい。気絶していたリシャルトさんをお嬢様が心配されて運ばれたのです。看
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