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形而下の神々
ナツキ・エンドーと白い女神
天才傭兵グランシェ
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物だ。
 ものすっごく貴重なので信じられないという風に聞くと、彼は自信満々で言い返してくる。

『しかし有るんだなぁ、これが』
「偽物じゃないのか?」

 自信満々の彼には悪いが、これが普通の反応なんだ。が、それでもグランシェの自信は揺るがなかった。

『いや、多分本物だ。持ってる奴が持ってる奴だからな』
「だっ、誰だよ?」

『タイチは知らないかもしれんが、白い女神っていう小説を書いた作家だ』

 俺はその作家を知っていた。学者ではないにしろ、いや、むしろ学者という肩書きを持たないおかげで可能になる身軽な調査活動で、度々凄まじい持論を本として披露しているのだ。
 もちろん、職業はただのエッセイストなので学会は見向きもしないのだが。

「遠藤菜月か?」
『その通り!!よくご存知で。そのナツキ・エンドーが持ってたとしたら?』「確かに、彼女の作品には俺の仮説に近い思考があった。本物かも知れんな」



 ナツキ・エンドー。彼女が俺の人生を変えるとも知らずに、俺は一人胸を高鳴らせていた。



『あぁ、ここからは詰まらないから手短に話すが、俺はチェコ軍の偉いさんのパーティーに呼ばれたんだ。
 美味い料理があるかも知れないし、断る理由も無いからとりあえず呼ばれてたんだけどな……居たんだよ。そこにナツキ・エンドーがな』

「何故?軍人の集まりだろ?」

『あぁ、それなんだが。どうやら参列者の中の一人と仲が良かったらしくてな、ナツキ・エンドーも呼ばれてたんだ』

 軍人さんと知り合いって、どんな調査してんだよ。

「それで仲良くなったと?」

『そう、その通り!!彼女の素性はシークレットだったけど、それは美しい人だったよ。
タイチと同じジャパニーズだけどね、ジャパニーズにしては身長も高かったし、立ち振る舞いもキッチリしてて、ホントに素晴らしい人だったよ!!』

「まさかグランシェお前、口説こうとしてたんじゃ……」

 するとグランシェは一瞬言葉に詰まったが返答してきた。

『細かい話は良いの良いの!!
 とにかく!!タイチの事を話したら是非会いたいだってさ!!』

 俺はとっくに日本人の心なんてモノは忘れたと思っていたが、同じ日本人が日本人以外の人間に口説かれていると思うと謎に腹立たしかった。
 やはり俺の根っこは日本人なのかも知れないな。


『ま、そういう訳でホワイトゴッデスが手に入るかもだから』

「おう、助かるよ」


 そうして、その日の電話は切れた。(
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