ナツキ・エンドーと白い女神
天才傭兵グランシェ
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
俺は大げさにため息を吐いて電話に言う。
「はぁ……手短に頼むよ」
そう言いながらも俺は論文を机に置いた。
彼の……傭兵グランシェの語る武勇伝はいつもスリリングで、考古学に身を置く俺にはとても経験出来ない様な話ばかりだった。
奴の話はこれで結構楽しいのだ。
そして例の如くグランシェの物語は唐突に始まった。
『チェコとスロバキアの国境の南半分は河で区切られていてな、その一番南側はモラバ川っていうかなりデカイ川が流れているんだ。
今回の紛争はそこで起きたんだがな。白兵戦が主体な俺に掛かれば川での戦闘なんてホームグラウンド同然な訳よ!!
白兵戦向きに兵隊の教育を施してだな、重火器が使い難い河川沿いでの戦闘、小銃よりも強烈な投石を仕掛けたら一瞬さ!!』
ハイ、終〜了〜。……って訳わかんねぇよ!!
「……非常にわかり難い。詳しく説明してくれよ」
『おぉ、タイチはアマチュアだから説明が必要か。
河川ではな、風が強いから火炎系の武器は扱い難い。更には川幅も広いから大砲も難しいんだ。戦車も深い河には潜れねぇ。
だから、原始的な銃撃による撃ち合いが始まるんだ』
要するに銃撃戦がセオリーである河川での戦闘で投石というイレギュラーな戦法を使って大勝利したって話だな。
グランシェは仮定を飛ばして話す傾向にあるから、これで結構理解力の訓練になる。
「ほぉ、納得だな。流石はプロだ」
『あぁ、それで銃撃戦でほぼ一択の戦争になるんだが、敵が銃撃戦を想定してる以上、銃撃戦以外で攻めれば以外に脆い。そこを突いたんだ。
と言うのも、銃撃戦には弱点がある。風が強いと弾が逸れるから狙いが定まり難いんだ。
それに比べて小型の投石機。小石を投げるための武器なら風の影響は小さい。小石は弾丸より重いから風に煽られ難いんだな。
そこで、TNT爆薬を使うんだ』
「TNT?2,4,6-トリニトロトルエンか?」
化学式は知らないが、トルエンという有機化合物に混酸を混ぜた窒素・酸素・炭素・水素から成る爆薬だ。実際に軍需もある、結構優秀なモノらしい。
『そう、昔っからある高性能な爆薬だ。
破壊力は4000J/g。簡単に説明するとだな……一点だけを爆破すると仮定すれば、TNTはたったの1gで1kgの重さの物体を4km先までブッ飛ばす。そんな爆薬なんだ』
「想像より強そうだな」
『実際には爆発は拡散するからそこまで強くはないが。いや、モンロー効果を利用すれば一点に爆発が集中してもしかしたら……』
「……おーい、戻ってこーい」
なにやら自分の世界に入っちゃってるみたいなので電話口に意識を引き戻す。全く迷惑な話だが、俺もそんな感じだしお互い様だ。とい
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ