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とあるβテスター、奮闘する
投刃と少女
とあるβテスター、幽閉される
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イリに、危うく大声で突っ込んでしまうところだったのを何とか抑え込む。
関心したようにメニューウィンドウを覗き込むシェイリを余所目に、慌てて自分のメニュー画面を開いて確認する。

―――ない。本当にログアウトボタンがない……。

フルダイブ形式のゲームでログアウトボタンがないということは、つまり現実世界に戻ることができないということだ。
ナーヴギアは脳から出力される信号を一定の箇所で遮断し、それら全てを自身のアバターへとリンクさせることによって、仮想世界へのフルダイブを可能としている。
当然ながら、フルダイブ中は現実世界の身体を動かすことは一切できない。脳からの信号が遮断されているのだから当たり前だ。
要するに、ゲーム中の僕たちは意識だけをこちらの世界に置き、現実の身体は抜け殻―――悪く言えば、植物状態だ。
もちろん現実世界で食事や排泄を行わないわけにもいかないため、SAOプレイヤーは定期的にログアウトして休憩を取る必要がある。

―――だけど、これじゃあ。

ログアウトボタンがない以上、それも不可能だ。
マニュアルにはログアウト以外に自力であちら側へ戻る方法は記載されていないし、ナーヴギアには内臓バッテリーがあるため、電力切れによって現実世界に戻されるということもない。
家族や同居人がいれば、誰かがナーヴギアを外してくれれば強制的にログアウトすることはできる。
だけど。SAOプレイヤーの中には、一人暮らしの人だって大勢いるはずだ。そういった人達は、誰かにナーヴギアを外してもらうこともできない。
つまり、ログアウトボタンが復旧するまでこのゲームから出ることができない。

―――バグ……?それにしては、対応が遅すぎる……。

SAOも人間が開発したゲームである以上、多少のバグは付き物だ。
でも、これは度を超している。
ログアウトできないなんて前代未聞のバグ、普通ならサーバーを強制停止してでも修正を急ぐべきなのに……。

「………」
さっき感じた、不吉なもの。
赤く染まった世界に、不気味に鳴り響く鐘の音。
そして、消えたログアウトボタン。
それら全てが、僕の“嫌な予感”を増長させる。

考えれば考えるほど、不安だけがどんどん大きくなっていく。
周りの喧騒も耳に入らなくなり、知らず知らずのうちに拳を握り締め―――

「ま、いっか〜。続きやろうよ、続き」
「え、ちょっと待―――」
ようとした瞬間、シェイリが僕の腕を掴んで出口へと引っ張っていった。
結構な力で腕を引っ張られ、半ば引き摺られるようにして出口へと向かっていく。

「ほらほら、れっつごー!」
「ちょ、ちょっと、強い強い!自分で歩けるから!」
「えー?」
僕が必死に解放を求めると、シェイリは渋々といった様子で手を放した。
そり
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