第三十一話 ドラクール
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りが無かった事に気付いた、海賊じゃない? だから俺の隣に来たのだろうか、海賊なら仲間の所に行くはずだ。
「黒姫一家の人、じゃないよな?」
「いえ、黒姫一家の人間ですよ」
一縷の希望も虚しく潰えた。あの連中と同じか、どうして連中の所に行かないんだ、そう思って視線をカフェテーブルの有る店の中央に向けた。はて、なんかこっちを見ている奴が居るな、さりげなく視線を外している。やっぱり狙いは俺か?
「お客さん、お飲み物は?」
「……ミルクを、氷を入れてください」
「……」
その言葉にマスターが呆れた様な顔をした。ま、ここでミルクは無いよな。半分自棄だ、言ってやるか。
「ここは酒場だぜ、ミルクは無いだろう」
俺の言葉に男はクスッと笑った。
「確かに酒場ですが、ここはフェザーンですよ。金を払えば客が望むものは用意する、そうじゃありませんか?」
おいおい、言うじゃないか。マスターを見ると肩を竦めている。グラスを取り出した、どうやら用意するらしい。
出されたミルクを男は美味しそうに飲み始めた。妙な奴だ、何だって酒場でミルクを飲むのか……。眺めていると男が話しかけてきた。
「独立商人? 船長ですか?」
「ああ、ベリョースカ号の船長だ」
「……」
男がグラスをテーブルに置き俺に視線を向けてきた。そんなにじっと俺を見るなよ。他人を不安にさせるようなことはするもんじゃないぜ。
「仕事は決まりましたか?」
さっきまでと違う、幾分低い声だ。ちょっと危険な感じがした。
「同盟の弁務官府の人間をハイネセンにまで送る事になった。その後はしばらく向こうに居るつもりだ。向こうは今大騒ぎだからな、色々と仕事が有りそうだ」
男がまた俺をじっと見た。サングラス越しでも分かる、強い視線だ。そしてフッと笑いを漏らした。ゾクっとするものが背筋を走った。
「ヤン提督と会うのでしょう? コーネフ船長」
「……お前、誰だ?」
俺とヤンの事を知っている! それに俺の名前も! この男が俺に近づいたのは偶然じゃない、やはり俺は黒姫一家にマークされている……。周囲の海賊を見た、皆が俺の方を注視していた、今度は視線を逸らそうとしない。さっきまでとは店の空気が明らかに違った、痛いほどに強張っている。マスターがゴクッと喉を鳴らす音が聞こえた。
「ヤン提督を、同盟を利用してフェザーンの独立を考えているなら無駄ですよ。帝国と同盟を戦わせてその中間で利益を貪る、そんなふざけた独立は許しません。フェザーンの自由と繁栄、その陰でどれだけの人間が死んだと思っているのです」
「……」
サングラスで目は見えない、しかし男の口元には冷ややかな笑みが有った。おそらく目は口元以上に冷えているに違いない……。
「ヤン提督に伝えて貰えますか。そろそろ戦争を終わらせる時
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