第三十一話 ドラクール
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クは帝国に寝返りルビンスキーは黒姫に捕まった。ルビンスキーは愛人に愛想尽かしされていたらしい、しかも噂じゃ一年以上前からだとか。全く情けない話だぜ。黒狐なんて呼ばれていたが何の役にも立たない、あんなのがフェザーンの自治領主とは……。滅びるのも当然か……。
店の中を見回した。まだ早い時間の所為だろう、客はそれほど多くない。店の中は壁際にはテーブルとイス、中央にはカフェテーブルが十個置かれている。十人程いる客が二、三人ずつカフェテーブルで飲んでいるだけだ。腰を落ち着けて飲む客ではない、一杯ひっかけて直ぐ出て行くのだろう。
「マスター、見かけない奴ばかりだな」
「最近来るようになった。帝国辺境の訛りが有る」
「じゃあ……」
マスターが頷いた、黒姫一家の連中か……。まさか俺達を探っている? さっきまでの会話の内容を思い返した。拙い事を喋ったか、いや音楽もかかっている、大丈夫だ……。
「スパイか?」
小声で話しかけるとマスターがフッと笑った。笑いごとじゃないんだがな。
「いや、ただの客だ、安心していい。あんたが来るちょっと前に来た」
「全員?」
マスターが頷く。安心して良いと言われても落ち着かない。その内“ちょっと良いですか”なんて強面の海賊に腕を取られて連れ去られそうな気がする。そうなったら生きて帰って来られるかどうか……。
「悪い客じゃないさ、大人しく飲むだけだからな。海賊の悪口を言っても多少の事なら知らん振りをしているよ。だがしつこくするなよ、二日前、それが原因で若い連中とトラブルになった」
「それで」
俺の問いかけにマスターが微かに笑みを浮かべた。
「ブラスターを喉に突きつけて終わりさ。……喧嘩はするな、どうしてもやるときは必ず殺せ、黒姫にそう言われているらしい。若い連中が慌てて詫びを入れて終わった。それ以来連中にちょっかいを出す奴はいない」
「怖い連中だな」
マスターが肩を竦めた。
店にまた一人客が入って来た。こいつも見ない顔だ、小柄でまだ若い、サングラスをかけている。店の中を見渡していたが俺の方に向かって歩き出した。武装している、レッグホルスターにブラスターが見えた。どうやら海賊らしい。まさか、俺を捕まえに来たんじゃないよな。マスターを見たが彼も困惑している。
「隣、良いですか」
柔らかく温かみを帯びた声だ、一瞬だが女かと思った。席は他にも空いている、それをわざわざ俺の隣に来た……。帰りたくなったが今席を立ったら不自然だ、もう少しここに居るしかない。
「どうぞ」
「どうも、では失礼します」
俺が応えると男は礼を言ってから隣に座った。礼儀正しい男だがその事が余計に不気味さを感じさせた。男は店の中を興味深そうに見ている、酒場が珍しいのだろうか? 慣れていないのかもしれない。男の言葉に訛
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