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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第三十一話 ドラクール
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…。

テオドラが思慮深げな目をしている。
「帝国も同盟も大変ですね」
「どちらかといえば同盟の方が厳しいでしょうね。統一されれば軍が解体されることになります。失業者があふれる事になる、そこに軍事産業の不振……。景気悪化は避けられない」
「なるほど……」

同盟の企業は現時点でも不景気感を感じているはずだ。何と言っても宇宙艦隊が二個艦隊しかない、大口ユーザーが帝国領侵攻以来激減しているのだ。宇宙艦隊の再建は国防問題だけじゃない、経済問題でもあるだろう。だが統一後はそれがゼロになる……。

「大規模な経済振興策、景気高揚策が必要になるでしょう」
俺の言葉にテオドラが首を傾げた。
「ローエングラム公はその辺りを理解しているのでしょうか」
うーん、そうだよな、その辺りがどうも頼りないんだ。

「ボルテック弁務官は理解していると思いますが……」
理解はしているだろうが彼はフェザーン人なんだよな。ラインハルトに対する影響力は決して大きくは無いだろう。バックアップする必要が有るだろうしリヒターやブラッケにも声をかける必要が有る。ウチの中でも対策チームを作るか……、トップはテオドラが良いかな。後でアンシュッツと相談してみるか……。

「困ったものですね、頂点になる人が理解していないと言うのは」
テオドラが苦笑している。俺も笑いたかったが真面目に答えた。
「良いのですよ、理解していなくても。頂点に立つ人は目標を示せば良い。色々な問題は周囲の気付いた人間が対策を考えてトップに示せば良いんです。頂点が問題を理解してしまうと困難さを感じて目標が小さくなる。それでは詰まらない、そうでしょう?」

テオドラの苦笑が更に大きくなった。
「親っさんの欠点が分かりましたわ」
「……」
「ローエングラム公に甘い事です。トップを甘やかすのは良くありませんわね」
「……宇宙を統一して新しい王朝を作ろうなんて突拍子もない事を考えるのは彼ぐらいのものです。楽しませてくれるんですから少しぐらい甘くても良いでしょう。そう思いませんか?」

テオドラがクスクスと笑いだした。
「向こうは親っさんの事を必ずしも好んではいないようですが」
「素直じゃないんです、まだ大人になりきれない、子供なのですよ」
「まあ」
「だからついつい構いたくなる、可愛いですからね」

テオドラが今度は声を上げて笑い出した。
「困ったものですわね」
「ええ、困ったものです」
「ローエングラム公も親っさんも、二人とも子供で。しかも二人ともその事に気付いていない、本当に困ったものですわ」
「……」

さて、景気の悪い話ばかりしていると気が滅入るな。気分転換に外にでも出てみるか……。せっかくフェザーンに来たんだ、あそこに行ってみよう……。



帝国暦 4
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