第三十一話 ドラクール
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えた可能性が有る。
逆なんだ、政治風土が違うからこそ経済的な結合を図るべきだった。統治方法はある程度ケース・バイ・ケースで良い。しかし経済的に結合する事で帝国に所属していると自覚させるべきだった。そのためには皇帝の直轄領とするべきだったんだ。その方が同盟市民に対しても皇帝が自分達に関心を持っているという意識を持たせられたはずだ。市民の中にはそんなラインハルトに対して好感を持つ人間も現れただろう。
文官達もラインハルトが関心を持っているとなれば自然と関心を持ったはずだ。そうなれば帝国の政策も経済交流を促進させるようなものになった可能性が有る。新領土総督なんて作ったら市民からは部下に任せて自分は無関心かと不満が出ただろうし文官達からも俺には関係ないとそっぽを向かれただろう。
百五十年間戦争をしていた、交流は全くなかった。その所為で帝国、同盟両国の人間に交流を図ると言う考えが希薄になっていた。その手の意識が有るのはフェザーン人なのだがフェザーン人は帝国でも同盟でも拝金主義者と蔑まれ信用が無い。その所為で新帝国統治に関われなかった。経済的な結合は図れずじまいだっただろう……。ラインハルト崩御後のヒルダは苦労しただろうな、彼女も経済に関しては関心が低い、帝国は本当の意味で一つになれたのかどうか……。
「親っさん、どうされました、難しい御顔をされて」
「……テオドラ」
誰かと思えばドミニク・サン・ピエールだった。もっとも俺がテオドラの名前を贈った以上、黒姫一家ではテオドラ以外の呼び名は許されない。彼女は俺の執務机の前に立っている。ちなみに俺が今居るのは自治御領主府の執務室だ。元々はルビンスキーの仕事部屋だな。以前もこんな風にルビンスキーの前に立ったのかな。
「悩み多き年頃なんです」
俺の言葉にテオドラが微かに苦笑を漏らした。
「おかしな話ですね、今宇宙で親っさん程満足されている方は居ないと思っていましたけど」
今度は俺が苦笑した。
「今は良いですけどね、一年後には地獄になる」
「……地獄、ですか」
「ええ、……私の心配が何か、分かりますか?」
俺の問いかけにテオドラが少し考えてから頷いた。
「……一年後には宇宙は統一され戦争が無くなります。しかし企業は戦争を前提にした企業活動を行っている。このままでは利益を上げられなくなる……、違いますか?」
テオドラは分かっている……。
「その通り、企業は何を作り何を売るべきなのか、生き残る道を探さなくてはならない」
戦争は膨大な物資を消費する。人が死ぬことを除けば企業にとっては大変有難い国家事業と言って良い。その国家事業が百五十年続いた、企業はどっぷり戦争に漬かっている、それによって利益を出してきた。企業の事業計画は戦争有りきのものだろう。だがそれが通用しなくなる…
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