第一幕その六
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さえも」
そう言いながらゆっくりと立ち上がった。
「けれど。何故かしら」
自身の胸を見て呟く。そこにはいつもある筈のものがない。だがそれ以上のものがあるように感じられた。
「あの人の言葉が。まるで心の中に刻み込まれているよう。こんなことははじめてだわ」
心が乱れていっているのを感じていた。
「真実の恋なんて。道を踏み外し、夜の世界にいる私にとっては全く縁のないものである筈なのに。どうして今こうして私の心を捉えるの?」
自分に対して問う。だが返答はない。
「愛し、愛される」
また呟いた。
「それは私の知らないこと。喜びなのでしょうか。それとも」
自分に対して問うていた。
「怖れ。この空虚で何時終わるかわからない仮初めの人生。それがあの人によってどうなるのというの?」
その心にアルフレードが宿っているのがわかった。
「愛を知ったのかしら。この私が。娼婦の私が」
また自分自身に対して問う。
「真実の愛に。そう、あの人に教えられたのよ」
だが思い直した。俯き顔をゆっくりと横に振った。そしてまた言った。
「いいえ」
今まで自分の言っていたことが馬鹿馬鹿しいものに思えて仕方がなくなってきた。
「そんな筈はないわ。そんな筈が」
不意にそう自嘲めいてそう呟いた。
「このパリで。空虚な街で。夜の世界で。私は何を求めようとしているの?」
目を閉じ口だけで笑っていた。
「この街では、夜の世界では愛なんてないわ。あるのは快楽と享楽だけ。それに身を任せるのが私の人生なのよ」
そう今までは思っていた。そして今もそう思おうとした。
「花から花へ。飛び歩くのが私の人生。夜の花を飛び歩くのが」
だが飛び歩けなかった。胸が苦しいのではない。何故か足が動かなくなってしまったのだ。それは何故なのか。彼女にはわからなかった。
「愛」
ここで屋敷の外から声がした。ヴィオレッタはその声を聞いてハッとした。
「あの声は」
それはアルフレードのものであったのだ。だからこそ我に返ったのであった。
「愛は全ての世界に存在する」
「全ての世界に」
ヴィオレッタはそれを聞いてまた俯いた。そして考え込んだ。
「そしてこの世をあまねく支配しているんだ」
「まさか」
首を振ろうとする。だが今度はそれはできなかった。
「・・・・・・・・・」
ヴィオレッタはそれを感じて沈黙してしまった。そこにアルフレードの声がまた聞こえてくる。
「神秘的で気高く、そして美しい。心に喜びを与えてくれるんだ」
彼はヴィオレッタに花を贈られたことで舞い上がっていただけであったかも知れない。だがその言葉でもヴィオレッタの心を打つには充分であった。
「私にも愛が」
「愛は誰にも平等に与えられるんだ」
「それじゃあ」
ヴ
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