第一幕その四
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手に取った。それで自分の顔を見た。
「何て肌の色なの」
見てまず愕然とした。蒼白であったのだ。
「まるで雪の様。かっては赤くてかえって恥ずかしかった程だというのに」
そう言って落胆する。そこでアルフレードが側にやって来た。
「あの」
「はい」
それに応えて顔を彼に向けた。
「大丈夫ですか」
「ええ、まあ」
にこりと笑顔を作ってそれに応じた。
「元気になりましたわ。お気遣い有り難うございます」
「それは何よりです。ところで」
「何でしょうか」
「いつもこうして夜遅くまで宴を開いているのですか?」
「そうですけれど」
これは彼女の仕事でもあった。娼婦は夜の世界の住人である。だから夜にこうした場を設ける。そして客の相手もするのである。
「あえて申し上げますがお身体には」
「わかっております」
ヴィオレッタはそう答えて頷いた。
「では何故」
「私のことは御存知でしょうか」
彼女はそれでも問おうとするアルフレードに対してそう言った。
「それはどうなのでしょうか」
「はい・・・・・・」
さらに問うとアルフレードは頷いた。
「勿論です。そのうえでこちらにお伺いしたのですから」
「ではもうおわかりですね」
「はい」
だが彼はそれでも言った。
「けれど若し貴女が」
「私が・・・・・・何か」
ヴィオレッタは顔を見上げた。
「僕のものならこのようなことは」
「させないとでも仰るのでしょうか」
「駄目でしょうか」
「面白い方ですわね」
「面白い」
「ええ。私はこの様な立場に身を置いております。そのような私に対して仰るとは」
「それが何か」
だがアルフレードはそれにも臆しはしなかった。
「この世に貴女を愛さない者なぞおりはしません」
「誰一人としてでしょうか」
冗談めかしてそう問うてみた。まさかとは思った。
「はい」
しかし彼は本気で頷いたのであった。これはヴィオレッタの予想外であった。
「・・・・・・・・・」
「僕もそうですから」
「本当に面白い方だこと」
一瞬沈黙してしまったがすぐにそう返した。
「そんなことを仰るだなんて」
「お笑いになられるのですか?」
「それが何か」
真摯な態度のアルフレードに対してヴィオレッタのそれは何処か大人のものであった。だがその心の中はまた別であった。揺れていたのである。しかしそれは決して見せはしない。
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