間幕
彼が荒野に至る理由
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こそ、新たなる僕の眷属。 君にはキシリアの名前をあげよう」
彼が魔を統べるこの国の王――魔王フルーレティであるという事は、あとから聞かされたことである。
その時は周囲の状況にまったく理解が追いつかず、何をすべ気か解らないままに学習室というところに送り込まれ、その後3ヶ月にわたってみっちりとこの世界の常識を叩き込まれた。
妖精たちの大半は子供という形態を持たず最初から大人の姿で生まれてきたり、成長が非常に早かったりすることが多いため、短期間で徹底的に知識を詰め込むこのような施設が存在しているらしい。
そもそも最初から大人の姿をしている妖精は、なぜか一般常識やその種族としての力の使い方を生まれつき知っているため、知識の範囲のすりあわせぐらいの意味しかないらしいのだが、あいにくとキシリアこと慎吾には前世で生まれ育った地球の常識と料理の知識、あとは最低限の言語能力しか備わっていなかった。
そして解ったことがいくつもある。
まず、自分は妖精。 それもシルキーと呼ばれる女しかいない妖精になっていること。
次にいま自分がいる場所が、もといた世界では無いという事。
この世界には人間以外の知的種族が無数に存在し、各勢力が絶え間なく争っていること。
この世界の人間たちは、慎吾の元いた世界から勇者と呼ばれる存在を呼び出して、魔王に対抗しているという事。
魔王は何人もおり、そのうちの一人が屋敷を管理する女妖精が欲しくて作ったのが自分だという事。
そして、その勇者が呼び出された次元の穴に吸い込まれたのが自分が生まれた時期の少し前であり、おそらく慎吾の魂がこの世界に紛れ込んだ原因ではないかという事がわかった時は、思わず顔も名も知らぬ人間達に殺意を覚えた。
そして巻き込まれるような形でこの世界にやってきた慎吾の魂は、自我も無くただ虚空を彷徨い続け、やがて岩が風化するようにこの世界に同化して溶けてしまうはずであったらしいのだが、その異世界産の奇妙な魂に目をつけたのが、魔王フルーレティ。
好奇心から慎吾の魂を捕獲したフルーレティは、それが男の魂なのか女の魂なのかも判らないまま、好奇心に駆られてそれをメイドとして誕生させる予定であったシルキーの体に放り込んだのである。
なんと適当な――それいいのか、魔王よ。
仮にもお前の身の回りの世話をさせる相手だぞ?
まぁ、歯向かったところで戦闘力は無いに等しいのだが。
その他にもいろいろショッキングな出来事はあったが……大事なことは唯一つ。
世界は違えど、これは料理人として再び生きてゆくチャンスだ!
慎吾の興味はそこだけにあった。
そうとなれば、まずはリサーチである。
この国に住む住民たちの特徴と、その食文化が最優先だ。
そして解ったことだが
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