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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
救われた出会い
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換して吐き出した。すると、さっきまで震えなかった空気が、まるでその性質が変わったかのように振動し、トウマの響きを伝えた。

「……お前も、ログアウトしに来たのか?」
「……ログアウト?」

 こちらを覗く切れ長の瞳が、驚きで丸くなった。彼は右手で口元を覆い、考える仕草をしながら視線をあたりのあちこちに向ける。やがて、彼の目が、今自分がもたれている柵で留まった。

「……なるほど。自殺しに来たわけか」
「自殺じゃない!!  このゲームがプレイヤーの復活をプログラミングしていないのであれば、プレイヤーがゲームオーバーになるということはログアウトすることと同義なんだ!! ……だから、だからこの柵を乗り越えてここから飛び降りれば……!」

 気が付くと、トウマは叫んでいた。同時に、自らに言い聞かせるような響きを帯びた言葉の数々が、放たれた瞬間にUターンしてトウマに入り込んでいく。入り込んだ言葉が荒唐無稽な安心感を心の中に植え付ける。

「無理だな」

 しかし、トウマの切実な思い込みを、その安心感もろとも、彼はたった四文字で打ち砕いた。

 トウマは反論しようとした。しかし、彼の四文字にはトウマの一万文字よりも強い説得力が宿っていて、思わずトウマは息を呑む。すると、彼はその四文字の根拠――自らが解析したというナーヴギアの構造とその役目を語ってみせた。


「……じゃあ、じゃあお前はどうしてここに?」

 彼の説明が終わって間もなく、トウマはそう尋ねた。ここははじまりの街南東のゲート付近であり、アイテムショップなどもない。普通に考えれば、フィールドに出る以外に立ち寄るような場所ではないからだ。

「武器の強化素材集めと、レベリング」
「なっ……!」

 彼はその問いに、さも当然そうに答えた。対して、トウマはあまりにも予想外な答えにのどを詰まらせてしまう。何か言おうと試みるが、様々な感情と言葉が複雑に絡み合い、開いた口の大きさを超え、唇に引っかかって出てこない。それらを何とか紐解き、合成するまでに数秒の時間を要した。

「ふざけてるのか!? ゲームオーバーになったら本当に死ぬって言ったのは、そっちじゃないか!!」
「別に俺は死ぬつもりで外に出るわけじゃない。さっきも言っただろ? 「武器の強化素材集めと、レベリング」ってな」

 トウマは怒り顔で言うが、彼はいたって冷静に返す。このSAOがデスゲームと化したことを理解しているのに、はじまりの街中央広場にいた者たちのように、恐怖に呑まれているわけではない。

「……何でお前はそこまでして危険な場所に向かおうとするんだ? ゲームを自分の手で終わらせたいからか?」

 素朴な疑問がトウマの口から飛び出した。それに対して、目の前の彼はゆっくりと首を横に振る。

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