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SAO−銀ノ月−
第四十二話
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起動――しなかった。
他の吹っ飛ばされていた《軍》のメンバーたちも、三々五々に《転移結晶》を起動させようとして起動せず、中にはパニックになってただただ《はじまりの町》の名前を叫びだすメンバーまでいる。

「結晶無効化空間……!?」

 一部の特殊なフィールドや、ダンジョン内部の悪質なトラップなどにしか無いと思われていた空間だったが、ボス部屋にあるというのは、あのキリトからも聞いたことがない。

 このアインクラッドに暮らしているプレイヤーたちがたまに忘れそうになり、そしてダンジョンに来たり知人が《生命の碑》に刻まれたりすると思いだすのだ――このソードアート・オンラインが、デスゲームであるということを。
これからのボス部屋は、恐らく全て結晶無効化空間なのだろう……!

「うああああっ!」

 人数を減じた《軍》のプレイヤーは満足にスイッチも出来なくなってしまい、残る5人のタンク装備部隊も散り散りに吹き飛ばされてしまい、残るは軽い金属装備でしかない《ダメージディーラー》組のみで、とてもグリームアイズの攻撃を止めきれやしない。

「……コーバッツ。お前は《軍》のプレイヤーを集めろ」

「そ、それはもちろん解っているが……グリームアイズはどうするんだ!?」

 コーバッツのその疑問はもっともであり、いくらコーバッツが《軍》のメンバーを再結集させようとしても、途中でグリームアイズの攻撃を受けては再び瓦解してしまう。

 だったら、最低一人でもグリームアイズの足止めが必要だ。

「グリームアイズは任せろ! お前は再結集させて撤退の準備だ!」

 ポケットから可能な限りクナイを取りだして、グリームアイズに投げつけるが、もちろんダメージなど微々たるものにも及ばない。
だが、少しのダメージであろうともグリームアイズの意識はこっちに向き、吹き飛ばされていったタンク装備部隊を追撃しようとしていたグリームアイズが俺の方を向いた。

「ひ、ひいぃ!」

 俺の近くにいた《軍》のダメージディーラーが、巻き込まれては堪らないとばかりに散っていき、グリームアイズが向かってくる方向にいるのは俺とコーバッツだけとなった。

「……頼むぞ」

 そのコーバッツも《軍》のプレイヤーたちを再結集させなければならないため、俺の側を離れてグリームアイズに吹き飛ばされていったタンク装備部隊の方へ飛ぶように駆けて行ったため、やはり残るは俺一人。

 胸ポケットについた《カミツレの髪飾り》を腕の中に握り締め、そのまま集中するために目を閉じる。
目を閉じていようと、その地響きでグリームアイズが迫ってきていることは伝わり、視界を自ら封じ込めたことで、ただでさえ恐怖の対象であるグリームアイズが恐怖の象徴となっていく。

 《カミツレの髪飾り
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