暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
SAO
〜絶望と悲哀の小夜曲〜
最後の血戦
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が迫っているのに、笑いを止めない。

おかしそうな、嘲るような、笑いを。嗤いを。哂いを。

その笑みを引っ込めないことを、レンが不審に思った頃には、もう遅すぎた。

唐突に、レンの右足部から鋭い痛みが神経を突きつけた。

「が………ぉ…あッ!」

視界がぐるりと回転し、即頭部が床の黒曜石に激しくぶつかって不満を言うように鈍い痛みを訴えた。

咄嗟に、視界の端の己がHPバーを確認する。HPバーの下には、真紅の部位欠損アイコンが点滅している。

右足の感覚がなくなり、後には冷たさだけが感じられるようになる。

首を巡らせてそこを見ると、右足に黒っぽい物体が張り付いていた。

漆黒の、アリ。

「………なんで…………」

レンの口から、掠れた声が漏れた。堪らず、両目から冷たい液体が零れ落ちる。

それは、涙という名の血。

「………なんでなんだよ……。エクレアねーちゃんッ!!」

レンの悲痛な叫び声に、エクレアはかくりと首を傾けた。

灰色のケープの向こうにある目は妙に虚ろだった。そのままエクレアは、糸のついた操り人形のようなぎこちない動きで歩み寄ってくる。

乾いた唇が動き、ごく小さな言葉が発せられた。

「ごめんね」

その乾ききった声がレンの聴覚を揺らした時、レンの思考を満たしたのは猛烈な怒りだった。

───なぜ、なぜなんだ!どうしてエクレアねーちゃんがヒースクリフの味方をするんだ!!

睨みつけたレンの視線の先で、エクレアは黙って微笑んだ。

その笑みはどこか乾いて、力がなく、壊れていた。

その壊れた笑みを浮かべるエクレアの背後で、ざざァっと黒い波が立つ。それは、途方もない数のアリの大群。彼女の僕たるそれらは、餌であるレンを今か今かと待ち構えているようにも見えた。

だが、それを操る主の表情は芳しくない。いや、悲痛と言ってもいいほどにか細く、震えたものだった。

そしてレンは見た。

エクレアの真後ろに立つヒースクリフの楽しそうな表情を。心からタノシソウナその表情を。

その表情を見、レンは直感的に悟った。

こいつだ。コイツがエクレアに何かを吹き込んだのだ。彼女にとって、全てを犠牲にしてまでやりたいことを。

「…………………………………………」

レンは黙って、失われた右足部に力を込めた。全身を覆っていた漆黒の過剰光の流れが変わり、右足に集まる。

そして数秒後、レンは漆黒の右足で立ち上がっていた。ヒースクリフの目が、ほんの数ミリだが細められる。レンの復活は、どうやら想定外のようだった。

その目を黙って見返したとき、その直線上に立ちはだかる人影があった。無論、エクレアだった。相も変わらずその目は濁っている。

殺すわけに
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