第二話 亀裂
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ぶのは、『他世界からの侵略者』という言葉。
――いいや、無い。侵略者がこんなに堂々と、しかも無警戒に接近してくるわけが無い、何より必要が無い。
なら彼の言うとおり“闇の書”の回収が目的、その理由は?
「書の回収の目的が聞きたい、と言う顔だな」
「ふぇっ!?」
「まだまだ子供だな、大人と話す時はもっと素直にあれこれ聞いてみるものだぞ。案外ボロが出る事もある」
「す、すいません…………」
「――――目的は“闇の書”の修復、と言ったところだ。あの本のシステムに、重大な劣化が確認された。自然的な劣化なら受け入れ様もあるが、人為的な改竄となれば話は別だ。開発に携わった者としては、その様な形で結末を迎えるというのは中々に忍びない。
管理局に回収・封印されるというのなら、俺が直接的に修理を施し、本来の状態に戻して次代の所有者に譲渡する。そうすれば問題は無かろう。それでも異常が在るとすれば、それは俺の責だ。その時は俺を捕まえればいい」
男は次々に矢継ぎ早に、あの本の状態を語っていった。
過去の所有者の改竄によって書の性質が変化している事。過去に起こった事件は所有者の場合によるが、悪意ではなくその性質上やむをえないであろう事。今の状態ならば、まだ修正が出来ると言うこと。
「可能ならば、管理局には一切の手出しはして欲しくない。はっきり言うが、邪魔で仕方が無い。それに、システムの修正には一度“闇の書”の666ページ分の蒐集を完了させる必要がある。現在のペースなら約一週間でそれが完了する、その後に俺が書を修復し、それで万事解決だ」
「…………解決してません」
…………この人は、過程を考えてない。
“闇の書”の蒐集、それはつまりその分の“犠牲者”が出ると言うことだ。被害者が出たと言う事件はそれほど出てはいないが、それは管理局が知りうる範囲での事だ。それを除けば、おそらく事件として取り上げるべき件数は数え切れない。666ページ、あと一週間で完了、一体どれほど犠牲が出ることか。
何よりなのはが恐れたのは、この男が“現在”をすら“過程”として捉えていると言うことだった。
今をすら犠牲にして、後の安寧の糧とする。長い目で見るならこの瞬間の犠牲など些細な事でしかないのだろう。今後発生する犠牲の数を考えれば、それもありだろう。だが、それでいい訳が無い。
シグナム、ヴィータ、彼女達が顔を合わせた二人も、その“闇の書”のシステムの一部と言う。だから消えても仕方が無い、その主も当代は諦めろ、犠牲者に関しては目を瞑れ、そんな話の何を鵜呑みにしろというのか。
「だがいいのか? 君の発言で俺が管理局に敵対したとなれば、君は何らかの責任を問われる事になるかも知れんぞ。魔導師を志すならば、その点は将来的に言って手痛い失点となる。それに先
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