第四幕その三
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とってよくない。退廃的なこの街は」
「けれど私は」
だがヴィオレッタはここで眉を顰めさせた。
「この街から離れて生きていくことは」
「できる」
だがアルフレードはこう言い返した。
「できるんだ」
「できるかしら」
「僕がいるから」
「貴方が」
「そう。だからこそできるんだ。二人なら何でも」
「貴方がいれば」
「そして僕には貴女がいれば。他には何もいらない」
「私はそして、昼の世界に生きるのね」
「そう。未来も何もかも私達の上に微笑む」
「何もかもが」
「神が祝福される。もう君は夜の世界にはいない」
「ええ」
「この世界にいるんだ。僕と同じ世界に」
「貴女と同じ世界に」
「だから。行こう」
「はい」
「二人で」
「アルフレード」
彼女はまたアルフレードの名を呼んだ。
「何だい?」
「まずは教会に行きましょう」
「教会に」
「そうよ。貴方が来られたことを神に感謝する為に」
「神に」
「この奇跡を。何時までも忘れない為に」
そう言いながら起き上がろうとする。だがそれは適わなかった。
やはり病のせいであった。それはもう誰の目にも明らかであった。そして彼女の命の蝋燭のことも。アルフレードにもそれはわかった。わかりたくはなかったが。
ヴィオレッタは鈴を鳴らした。それで召使を呼ぶ。
召使がやって来た。ヴィオレッタは彼女に対して言った。
「外に出たいのだけれど」
「えっ」
召使はそれを聞いて驚きの声をあげた。
「あの、今何と」
「聴こえなかったの?外に出たいのだけれど」
ヴィオレッタはまた言った。だが召使はそれを聞いても動こうとはしない。かわりにこう言った。
「あの」
「何かしら」
「今は旦那様と一緒におられる方がいいと思いますが」
「私達はもう何時でも一緒よ」
「しかし」
「ヴィオレッタ」
それを横で聞いていたアルフレードが召使に助け舟を出すようにして言った。
「今はここにいよう」
「けれど」
だがヴィオレッタはそれにあがらおうとした。まるで自分の運命にあがらおうとするかのように。
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