第1話 召喚されたのは女の子ですよ?
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「ところで、呼び出して置いてなんだけど、ここは危険な土地なのよね。それで、助っ人を頼みたくて召喚を行った訳なんだけど……」
この目の前のハクと名乗った少女に、そう話し難そうに語る美月。もし、この召喚が失敗したのならば、彼女を返す方法を考えなければならない。
この召喚は、この世界の特性。転生者たちのスキルアップの為に造り出された世界に生きる住人として、窮地に立たされた自分達への助っ人を依頼する為の物で有り、転生者とは言え無力な一般人の、更に良家のお嬢様を呼び寄せた所で意味はないのですから。
ハクと名乗った少女が、笑って美月とタマを見つめた。そして、小さくひとつ首肯く。
そして次の瞬間……。
「ふるえゆらゆらゆらゆらと」
静かに、何事かを呟き出すハク。
その瞬間、彼女の雰囲気が変わった。神道が示すのは絶対の清浄。この目の前の少女は一切の不浄を受け付けないその神道の禊の空間を、一瞬の内に作り上げたのだ。
玉串も。御幣も。そして、注連縄も。如何なる霊具の補助を受ける事なく、自らの精神のみによって。
「ふるえゆらゆらゆらゆらと」
これは、自らの魂に神を降ろす、魂振り。
そして、美月の見ている目の前で、ハクと呼ばれる少女の周囲に十個の光りの珠が浮かぶ。
「ひ、ふ、み、よ、い、な、む、や、こともちろらね」
その一瞬の後、彼女の周囲を光りの珠が、ゆっくりと回り始める。
これは魂を鼓舞し、そして、異界から力を降ろす祝詞。
「しきる、ゆゐつわぬ、そをたはくめか」
彼女の祝詞に合わせて、更に光輝を増す光珠。
そして、その祝詞に合わせて、巨大になって行く威圧感。
いや、それは最早物理的な圧迫感として感じられるレベルとなって居り、美月は訳も判らない内に、膝を付き物理的な圧迫感に対処せざる得ない体勢を取って居た。
「ちょ、ちょい待ち! ハクちゃんに能力が有るのは判ったから」
これ以上、この祝詞を続けると、間違いなく『彼』が顕われる。
この祝詞は、とある場所に御隠れに成った尊い御方を呼び出す際に唱えられたとされる祝詞。つまり、この目の前の少女は、彼の御方の神力を引き出せる巫女。
つまり、日の巫女と言う事。
いや、もしかすると姫巫女。もしくは皇女。
「ハクちゃんを疑ったのは謝るから、この辺りで勘弁して!」
完全に、物理的な威圧感に抗する為に片膝を付き、半身に成りながら、そして同時に、強烈な光を直視しないように片手で顔を覆いながら、そう叫ぶ美月。当然、もう片方の手は、胸の中で縮こまっている白猫を護っている。
「疑う? 私の何を疑っていらしたのですか?」
心の底から
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