暁 〜小説投稿サイト〜
私は何処から来て、何処に向かうのでしょうか?
第1話 召喚されたのは女の子ですよ?
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を見つめ続ける少女。
 そんな一同の間を、春に相応しい長閑な大気と、何処か遠くから聞こえて来る鳥の声のみがその支配領域を広げて行く。

 ……………………。
 ………………。

「え、え〜と、そ、それで、貴女のお名前は、なんて言うのかな……」

 流石に、沈黙と言う微妙な雰囲気に耐えられなく成った美月が、その春の微笑みを見せ続ける少女に対して問い掛ける。そう、最初に転生者の事を話した時に、紹介状の事を佐伯の者がどうとか言っていた事を美月は思い出したのだ。
 その口振りからすると、この目の前の少女は良い所のお嬢様だった可能性も有ると言う事。但し、それにしては、服装が巫女服なのが不思議と言えば、不思議だとは思ったのですが。

「はい? 私の名前ですか?」

 少し、小首を傾げてから考える少女。しかし、微妙な反応。そして、自らの名前を名乗るにしては妙な空白の後、

「家ではお比女様(おひいさま)と呼ばれて居りました故、私は自分の名を知りません。ですので、私を御呼び頂く時は、ハクと御呼び下さい。私の家がハクと呼ばれて居りましたから」

 そう、少女は答えた。もっとも、その内容に反して、そのハクと名乗った少女の発して居る雰囲気は悲愴なものでも、そして、悲哀を湛えたものでも無かった。
 これは、この少女が向こうの世界での生活に不都合も、そして、不満も感じていなかったと言う事。

 但し、それでは何故、この少女が美月の召喚を受け入れたのか判らなくなるのだが。

 いや、そう言えば、このハクと名乗った少女は妙な事を言っていた。
 それは……。

「そう言えば、ハク。アンタって、転生者なのに、神様に転生させられた訳ではない、と言う事だったわよね」

 確か、この世界のゲームへの参加資格。それは、『転生者』や『憑依者』で有る事。
 ……のはずなのですが。
 確かに、この世界で生を受けた美月や、タマには関係有りませんが、この世界。神の都合で転生や憑依者となった者達に新たな能力や技能を付加させる目的で創られた世界だったはずなのですが……。

「はい。人は神に因り転生させられるのではなく、自らが望み、自らが進む道を決めてから転生を果たすのです。確かに、必ずその望み通りの生命を過ごせる訳で有りませんが、それが、世界の理です」

 平行世界とは無限に存在する。そして、おそらく、ハクが暮らして来た世界と言うのは、そう言う類の世界だったのでしょう。
 ただ、その場合、この目の前の長閑(のどか)な笑顔を見せて居る少女は、ただ転生者で有ると言うだけの一般人と言う可能性も……。

 しかし、審神者のタマが、このハクと名乗った少女を神格有りと表現していた。神様転生でもないただの人間が、神格を宿す事が可能なのだろうか。


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