第1話 召喚されたのは女の子ですよ?
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窓から差し込む月光が、初秋と言う季節に相応しい大気に支配された世界を蒼白く照らし出していた。
そう。半分に欠けた紅き月は徐々に中天へと昇ろうかと言う雰囲気ですが、それでも、時刻としては未だ宵の口。
……いや、古き血の一族に覚醒したタバサに取っては、これからが彼女本来の体調の好調期へと差し掛かる時間帯で有り、
彼女と同じ簡素なベッドの上に横に成った湖の乙女も、本来は眠りを必要としない精霊と言う種族で有るが故に、睡眠欲と言う物に支配される存在では有りませんでしたか。
俺は、読んでいた和漢により綴られた書籍より僅かに視線を上げ、窓から覗く蒼と紅。二人の女神の花の容貌を瞳に映す。
そう。今宵は、誰に確かめる必要のない静かな夜で有った。
深い夜の静寂に沈んだ世界は、風も、そして、この季節に必要な虫の音も聞こえて来る事はなく、また、雲が二人の女神を隠す事もない。
感じるのは月の明かりと星々の瞬き。まるで、森羅万象……生きとし生ける物すべてが寝入って居る。
そんな、夜で有った。
二人の少女の様子を確認した後、自らが読み続けていた書物に再び視線を戻した瞬間、其処に奇妙な違和感を覚える俺。
そう、其処に存在していたのは、無機質な印刷された角ばった文字などではなく、明らかに人が書いた、しかし、意外に几帳面な文字。そして、その文字が書き記されて居る、この世界では未だ珍しい綺麗に製紙された紙で有った。
そして、その和紙と思しき丁度、栞ぐらいの大きさの紙には、
『知り合いに頼まれたから、少し出張って来てね。by妖怪食っちゃ寝』
……と、日本語で記されていたのでした。
俺は、少し訝しげな瞳で周囲を見渡し、それと同時に霊気を周囲に送る。
そして、しばしの空白。
………………。
…………。
二人の女神の放つ光は相変わらず世界を照らし出し、すべてのモノは、まるで、これからの世界の在り様を見定めるかのようにじっと息を潜めている。
非常に静かな。とても静かな。そんな、夜に変わりは有りません。
……大丈夫、問題はない。俺の送った霊気に返って来た手ごたえからは、この部屋に施された結界に綻びはなし。と言う感触しか得られませんでした。まして、視線を自らの手元に存在している書籍から外した際にも、不審な魔力の動きは感じませんでしたから、この結果は半ば予想された物でも有ります。
しかし、それならば、この栞は一体、何処から舞い込んで来たのでしょうか……。
俺の不審な動きに気付いたのか、タバサのベッドの上で横に成った状態で、本を読んでいた湖の乙女が置き上がり、俺の傍まで歩み寄って来る。
その表情は普段通り。しかし、雰囲気からは、少し、俺の
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