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椿姫
第三幕その六
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のかを。
「彼女は御前にどんなことをしてくれたのか。忘れたのか」
「・・・・・・・・・」
「そして御前の知らないこともあったのだ。それは秘密にしておこうと思っていたのだが」
「僕の知らなかったこと」
「そうだ」
 父は言った。
「私は彼女が御前を愛しているということを知っている」
「愛している?」
 過去形ではないことに気付いた。
「彼女はもう夜の世界の住人ではなかったのだ。御前の側にいたかったのだ」
「では何故」
「全ては御前の為だったのだ」
 彼は沈痛な声でこう言った。
「そして娘の為」
「妹の為」
「身を引いてもらったのだ。それは決して言うまいと思ってたが」
「何でそれを」
「言えると思うか?悲しい話だ」
 父はまた言った。
「それを言うと彼女が余計に惨めになる。どうしてそれを言えようか」
「けれど」
「けれども何もない。全てはよかれと思ってやったことだが」
 そう言いながらアルフレードとヴィオレッタを見た。

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