第三幕その五
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いと」
「私のことは忘れて下さい」
力ない声でこう言うのがやっとだった。
「そして幸せに暮らして下さい。そうすれば」
「どうなるというのですか」
声に怒りが篭ってきた。
「私にはもう」
「僕を捨てて新しい男に抱かれているんだ」
「・・・・・・・・・」
その質問には答えようとしない。顔も背けたままであった。
「相手は誰ですか?」
「それは」
アルフレードの問いにも答えようとしない。アルフレードは少なくともそう感じていた。だが実は違っていたのだ。答えられなかったのだ。
「答えられないのですね」
「いえ」
もうこうするしかない、と思った。心にもないことでもこう言うしかなかった。
「それは」
「男爵ですか!?」
アルフレードは問うてきた。
「ドゥフォール男爵ですね、そうですね」
「はい・・・・・・」
顔を背けたまま頷く。
「彼を愛しているんですね」
「それは・・・・・・」
心にもないことを言うことはできなかった。かって夜の世界にいた時には言うことができたというのに。もう戻ってきても言うことはできなかった。彼女はこうした意味でもう夜の世界にその身は置いていなかったのである。
「どうなんですか、また嘘を仰るつもりですか」
「いえ」
嘘という言葉に反応してしまった。こうなってしまっては後に退くことはできない。
「では仰って下さい、本当のことを」
「言います」
応じはしたがやはり顔は背けたままであった。
「では」
「愛しています」
それを言うだけで心が辛くなった。
「あの方を」
本当は別の者をまだ愛していた。しかしそれを口にすることはもう許されていなかったのだ。それを知らないのはアルフレードが愚かだったからではなかった。だが彼は愚かな行動をとってしまった。
「よくわかりました」
アルフレードはそれを聞き怒気を露わにした声でこう言った。
「貴女のことが。それでは僕も覚悟を決めましょう」
こう言って先程自分が出て来た扉に顔を向けた。そしてこう叫んだ。
「皆さん」
この宴に参加している全ての者を呼んだ。
「来て下さい、すぐに」
「!?」
扉の向こうから気配がした。夜食を摂っている者達がそれに反応したのだ。
「すぐに。御見せしたいものがあります」
「一体何ですか、ジェルモンさん」
客達は扉の向こうからアルフレードに問う。
「何があったというのですか?」
「すぐにわかります」
彼はそう答えた。そしてまた言った。
「すぐにこちらに。お願いします」
「わかりました」
客達はそれに応えた。そしてどやどやと宴の部屋に戻ってきた。そしてアルフレードのところに来た。
「何の御用件ですかな」
「この女を御存知でしょうか」
アルフレードはヴィオレッタ
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