飢餓航路
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示し、その開発を同盟政府に提案していたからである。
惑星カプチェランカの資源はこの星でしか採れない訳ではない。
とはいえ、この資源を使ってアスターテやエル・ファシル等の星系経済に寄与すると言われると、その星系選出の議員が黙ってはいない。
ルビンスキー氏の狙いは明確で、カプチェランカまで同盟の戦線を押し出す事で同盟の取っている出血戦略を放棄させる事なのだろう。
それは同盟政府も分かっていて、色々都合がいい帰化同盟人のアレクセイ・ワレンコフ氏所有の企業にこの採掘権を与える事でフェザーンに対するあてつけを行っていたり。
そして、実際に採掘されないカプチェランカの資源に期待する星系政府には補助金の増額で話をつけていた。
という訳で、同盟は出血戦略を放棄するつもりはないが、政治的な手打ちをする為にカプチェランカに出兵するという実に民主主義国家らしい理由をもって今回の作戦は決行されたのである。
「惑星カプチェランカ上空に帝国軍発見!
規模は隊規模。
大型艦六、中型艦七、小型艦200前後です!」
ワープアウトから数時間後、偵察衛星が捕らえた惑星カプチェランカ上空に帝国軍の姿は、防衛にしては無様な姿だった。
戦艦とおぼしき大型艦が我先にと転舵し、巡航艦や駆逐艦も隊列をこちらに向ける事無く、イゼルローン方面に向けるしまつ。
准尉の報告とモニターに映し出されたその光景を眺めながら、アッテンボロー戦術長は呟かずにはいられなかった。
「もしかして、帝国軍のやつら、カプチェランカから逃げ出そうとしていないか?」
何度か行われた惑星カプチェランカ上空の戦闘では、輸送船が逃げる時間を作る為に帝国軍護衛部隊が迎撃するという形で戦闘が発生していた。
もしくは、ネズミ輸送中の帝国軍部隊が迎撃するというパターン。
今回みたいに逃走前提という形は始めてだが、同時にアッテンボローの言うとおり、守る必要が無くなった=カプチェランカの放棄を決定した可能性が高い。
「第十偵察隊司令部より通信。
このまま追撃戦に移行する。
以上です」
戦闘そのものはとりとめて書く事もないものだった。
惑星カプチェランカから発進した帝国軍は推力が足りず、数に勝る同盟軍に追いつかれて短時間の交戦の後降伏し全滅したのである。
その交戦も同盟軍の被害は数隻に終わり、放棄された基地およびプラントが時限装置による爆発によって確認できたので同盟軍は勝利を持って撤退したのである。
その結果、ただ一隻の駆逐艦を見逃す事になった。
撤退する帝国軍本隊から見捨てられた事で結果的に助かった船の名前は駆逐艦ハーメルンU。
見捨てられた将兵を集め、損傷した船体の為基地と共に放棄される予定だったこの船をドライアイスにて補修して
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